「先行は競輪の華」と言われるように、差されても、まくられても、風圧に立ち向かっていく選手は、ファンの心をつかむ。ベテランになってもそのスタイルを貫くのは、こだわりの強い選手が多い。

南関ラインの追い込み選手たちが「足を向けて寝られない」と口をそろえる選手がいる。

今期限りでの引退を決意した小島寿昭
今期限りでの引退を決意した小島寿昭

小島寿昭(55=神奈川)は83年9月のデビューから35年余り、自力で戦い続け、今期限りでの引退を決意した。最高位はS2班だが、通算3000走と500勝を達成したことは誇りとなっている。

「競輪学校は125人中119位で卒業。すぐクビになると言われていたのに、55歳まで続けられたのは、人一倍努力したから。俺は器用じゃないから先行しか出来なかった。先行は苦しいけど、勝っても負けても納得がいくからね」。

残りのレースは、11月の奈良(12~14日)、前橋(22~24日)と、12月の川崎(9~11日)、伊東(22~24日)の4場所のみ。

近年は自力で見せ場を作るシーンが減ったが、「地元の川崎以外は33バンクばかり。自力を出すチャンスはあるだろうし、いつでも動ける準備はしておくよ」。

10年1月に97期としてデビューした息子の歩(29)に「俺の記録を1つでも破ってもらいたい」と、自身がかなわなかったS1班への夢を託して、最後まで自分のスタイルで完全燃焼するつもりだ。

【松井律】