競輪、楽しんでいますか?

少し時間がたってしまった話で恐縮だが、15~17日に行われた立川F1は、S級が阿部拓真、A級が山口聖矢の優勝で幕を閉じた。

A級優勝を飾った山口聖矢。来期はデビュー初のS級昇格が確定的だ
A級優勝を飾った山口聖矢。来期はデビュー初のS級昇格が確定的だ

特に、山口は日刊スポーツ評論家のヤマコウ(山口幸二氏)のご子息とあって、個人的にも喜ばしい優勝だった。来期はデビュー5年目にして初のS級昇格も確定的で、弟の拳矢ともども、ますますバンクを沸かせてくれるに違いない。今開催は3日間ともラインの先頭だったが、父も含めた周辺には追い込み転身を勧められており、本人もその気は十分。弟とはひと味違う、父のような名マーカーを目指してほしい。

そんな中、シリーズの“主役”は、何といってもレジェンド・神山雄一郎だった。現役最多となる通算900勝へ、あと1勝と迫っての立川入り。地元の関東地区とあって、期待は否応なく高まった。前検日には「(記録に王手をかけた2場所前の)向日町の時は“いつでも勝てるなあ”という感じだったけど、(前場所の)名古屋の時は体調が悪かったこともあって、“このまま勝てないんじゃないか?”とまで思ったよ。分からないもんだねえ」と集まった報道陣を笑わせていた。

大記録にあと1勝と迫っている神山雄一郎
大記録にあと1勝と迫っている神山雄一郎

結果は周知の通り、3日間未勝利で無念の足踏み。大記録達成は25日からの小田原F1に持ち越しとなった。

その最終日のことだった。レースが終わって10分間のブレスコントロールが終わるやいなや、若い記者をつかまえてこう切り出した。

「頼みがあるんだけど。2年ぐらい前の○○競輪F1○日目に○○-○○の3番手から直線伸びて勝ったんだよね。その日付を調べてくれないかな。それが分かれば、その時使っていたフレームが分かるんだ。それから、やっぱり2、3年ぐらい前の○○競輪のナイター記念の○日目に○○の番手で勝った日付と、あともう1つ○○競輪の…」と、数レースの日付の調査を依頼したのだ。

それぞれ、過去に確かな手応えを感じたレースなのだろう。前検日とは全く違う、鋭いまなざしが印象的だった。と同時に、「自分が走った全てのレースを覚えている」という超人的な記憶力にもあらためて驚かされた。

先日、練習仲間で同世代の黒崎直行に会ったところ「神山(雄一郎)は今が一番きつい時なんじゃないかな。でも、闘志は全然、衰えていないよ。“まだ何かやれることがあるはず”という向上心はすごい」と話していた。

時がたてば900勝も単なる通過点になるはずだ。

頑張れ! 神山雄一郎。【栗田文人】

S級優勝は阿部拓真(写真は以前に撮影した物です)
S級優勝は阿部拓真(写真は以前に撮影した物です)