よかれと思ってやっていても、ファンが望んでいないことがある。今年の平塚日本選手権や松戸サマーナイトフェスティバルの中継を見たファンなら、思うところがあったのではないだろうか。それは、レース中継のカメラワークだ。

 周回中は普通通りでも、勝負どころの最終バックを過ぎてからは、実際に走っている選手に合わせて、カメラも移動させたりする場面があった。ときに選手と同じ速度で追い掛ける。ときに先頭集団の選手がアップになる。レースのスピード感、臨場感やダイナミックさをアピールしたいのは分かる。

 しかし、ファンが見たいのは、自分が買った選手や先行した選手ばかりではない。別線がどこから仕掛けたのか、後方で並走している選手がどこで立ち遅れたのかなど、レース全体の流れだ。負けた選手でも、動きの善しあしを見極めることが、次の日の車券戦術につながる。カメラが先頭集団に寄ったり画面の切り替えが多くては、見づらいことこの上ない。あるテレビ関係者は「制作サイドのマスターベーションだ」と手厳しい。ありがた迷惑な演出は見直すべきだ。

 場内アナウンスも本当に必要なのか。「お買い漏れのないよう、投票券はお早めにお買い求めください」。「まもなく締め切ります。お早めにお買い求めください」。約30年前に競輪を始めたころは投票所もファンでいっぱいで、並んでいても買いそびれることがあった。残念ながら、今はそういう状況ではない。買いあおりたいのは分かるが、そのアナウンスが必要だろうか。ファンも締め切り時刻は分かっている。

 レース後の「着順が確定するまで投票券は大切にお持ちください」。まさに、言わずもがなではないだろうか。