平原康多(36=埼玉)が冷静な中団確保から外強襲でビッグレース9冠となった。若手の台頭が顕著なシリーズだったが、最後は格とキャリアの差を見せつけた。これで今年の賞金ランキングも3位に上昇し、6年連続9回目のKEIRINグランプリ(GP)出場が当確となった。次の目標は寛仁親王牌(10月5日~、前橋)での今年初G1タイトル奪取だ。

世代交代はまだ早い。平原が歴戦の勇者の意地と誇り、そして実力を示した。

デビュー最短ビッグVを狙う山崎賢人の3番手から、同じく若手の清水裕友が内を突いて鋭く伸びる。だが、その外からひと踏みごとに差を詰め、1/4輪かわしたところがゴールだった。「うれしいですね。ゴール前でも伸びていたし、いけるかな、と。何も考えずにいった方がいいと思って体が反応するように走った。だから落車も避けられたし、足はロスしたけど立て直せた」と無の境地を強調した。

同県の後輩・阿部大樹が言う。「平原さんの何がすごいって、とにかく自転車好きのレベルが違う。稼ぎたいとかそういう話ではなくて、自転車が好きすぎて、見ているこっちがまぶしいぐらい」。今大会もセッティングに自信を持って高知入りしたが、初日4着後、さらに煮詰め直してこの日の結果につなげた。今回、地元地区から名を挙げた太田竜馬も含め、若手にとって大きな壁となって立ちはだかった。

これで賞金でGP出場もほぼ確定。だが「GPもそうだけど、次の寛仁親王牌を勝つことを目指していきたい」と貪欲な姿勢は崩さない。幕末の志士・坂本龍馬を生んだこの地で、最後の栄冠を手にしたのは、誰よりも志の高い男だった。【栗田文人】