渡辺晴智「すごかった」地元決勝で完全燃焼/静岡

<静岡競輪:日本選手権>◇G1◇最終日◇5日

 地元の期待を一身に背負い、8年越しの地元ダービー連覇を狙った渡辺晴智(42=静岡)は、中川誠一郎、吉田敏洋にまくられて3着に終わった。

 前を託した新田祐大が赤板1角から深谷知広を突っ張って主導権を奪取。深谷が打鐘すぎから強引に巻き返してきても、踏み合わせたことで、絶好の番手回りの展開になった。最終2角では深谷を張って中川誠一郎にも大きなあおりを作ったが、その上を行かれて万事休す。吉田に切り替え、最後まで逆転を信じてハンドルを投げた。自転車を降り、肩で大きく息をした渡辺は「すごかったあ」とつぶやき、しばらくぼうぜんとしていた。

 「G1タイトルは取るべき人が取るもの。今日はそれが中川だったというだけでしょう」と話した。決勝の作戦について質問されると「言わない」とピシャリ。すべては胸の内にしまい込んだ。

 8年前に制した、地元での日本選手権の決勝戦。前検日には「やるべきことはやってきた。そのとき(8年前)より経験値は積んだけど、足はない」と冗談っぽく語っていたが、この日のために完璧に仕上げてきた。「努力をすればまたこの舞台に立てるんだ、と思っただけでもすごくうれしかった。すごい舞台を走っちゃいましたね」と、最後に笑顔を見せた。優勝には手が届かなかった。だが、1万3000人超のファンは、渡辺の意地と誇りの走りをしっかりと目に焼き付けた。