【競輪】ガールズ片岡美奈は元消防士!火消しから輪界に火を灯す戦士へ華麗に転身/注目ルーキー

宇都宮の「雷神バンク」を背に笑顔を見せる片岡美奈(撮影・丹羽敏通)

<Girl 's Collection(ガールズコレクション)2024>

文武両道を目指す栃木・作新学院高から2人の有望ルーキーが誕生した。かたやガールズで類を見ない、消防士を経て126期生になった片岡美奈(25=栃木)が「Girl,s Collection(ガールズコレクション)2024」第5回の主人公。男子は野球部で4番サードを務め、甲子園の土を踏んでいる中島淳(25=埼玉)を特集する。ともに自転車競技の経験が乏しいながら力走する、その素顔に迫った。【取材・構成=野島成浩】

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ほぼ無名ながら、しっかりと勝ち負けまで持ち込むルーキーが現れた。そのガールズは片岡美奈。7月の本格デビュー以降、先行型を追いかけ回したり、後方から前団へ追い上げたりと大奮闘が続いている。自転車競技や競輪選手養成所でさしたる実績がない代わりに、武器として作新学院高の女子硬式野球部で白球を追い、消防士だった5年間に培ったど根性がある。

「体を動かしたり、スポーツしたりが大好き。今の目標は、仲間や同僚だった方から『あの活躍中の片岡は自分たちと一緒に過ごしたんだぜ』と自慢してもらえるように」。モチベーションの源を明かした。

アクティブでポジティブ、旺盛なチャレンジ精神は幼い頃から。栃木県の北東部にある、空気も水も澄む田園地帯に生まれた。家の近くにある田畑を駆けずり回り、小学生になると兄をまねて野球をはじめ、中学でソフトボールに熱中した。そして「カキーンと打ったり、パシッと捕ったり、乾いた音がする硬式のボールが好き」と、高校では硬式野球にシフトする。

肩を壊しても、体中があざだらけでも、早朝や夕方から遅くまで猛練習に励んだ。高3夏の出来事は最高の思い出。お隣のグラウンドで汗を流す男子野球部が全国制覇を果たしたのだ。「甲子園に行って応援を。もう感動。ああいう舞台は憧れです」。一身に注目を集める姿を思い描いた。

高卒後の進路は公務員を志望した。「他には警察官とか自衛官とか。父が地域の消防団にいたこともあり、消防士に」。専門学校に通い、2度目の試験でパスした消防学校では、消防や救急救命に関するあらゆることを学んだ。「法律を勉強したり、機材の使い方を練習したり。合わせて20キロ以上になる防護服と空気呼吸器を背負いながら、高い所によじ登ったことも。もちろん放水も。筋肉がぱんぱんになりました」。

消防士として県北部の消防署に赴任すると、いつあるか分からない出動要請に備えた。「先輩たちのオンとオフの切り替えがすごい。冗談を言い合ってると思ったら、指令を聞くと表情がきりりと。自分は消防車の運転では緊張しっぱなし。1分1秒を急ぐ時に道を間違ってられない。消防車が通れない道もたくさんあったので」。

ただ、地域への貢献にやりがいを強く感じる日々は、新型コロナウイルス禍により変化が生じた。非番の日でも外出を控えた。そんなある時に、インターネットでガールズケイリンの選手募集を目にする。「ガールズっ? 適性試験っ?」。体を動かす、スポーツが好きという思いにかられ、選手を志した。野球、そして消防の現場で鍛え抜いた全身のバネが躍動した。主に背筋と垂直跳びを審査する、養成所1次試験を難なくクリアしてみせた。

この秋は決勝進出が続いて自信を得た。その決勝では見せ場がなく、トップクラスとの脚力差を思い知らされながらも、全くへこたれない。

「養成所に入ってから、1日1日懸命にやってきました。誰が強いか考えるより、自分のことで精いっぱい。自転車は奥深く、とにかく乗らないと、走らないとコツが分からない。ただ、練習でできたことはレースでもできる。野球や消防士の頃と思いは同じ」。自転車のエリートはもちろん、多くの世界から人材が集まり、ガールズケイリンはよりレベルアップする。異色の経歴を持つ美奈も、その1人として戦いを熱くしていく。

◆片岡美奈(かたおか・みな)1999年(平11)1月29日、栃木県生まれ。私立作新学院高を卒業。消防学校時代を含め、消防士を5年務めた。消防や救急車両の全般を運転できる大型自動車免許、陸上特殊無線技士の資格を持つ。競輪選手養成所に適性試験で合格し、126期生で在所10位。卒記レースは4、3、3着。デビューから42戦未勝利。総取得賞金424万6000円(データは26日現在)。158センチ、59キロ、背筋力59キロ、太もも59センチ、血液型O。

★師匠の江連和洋「恐怖心みたいな感情ないかも」

片岡は養成所の1次試験を合格した後、江連和洋(52=栃木・76期S級2班)に弟子入りした。G1最高峰の日本選手権を経験し、選手会の栃木副支部長も務めていたベテランが、その走りを見てはアドバイスを送る。日ごろは弟子に辛口でも、「想像以上に健闘しているし、恐怖心みたいな感情がないかも」と、実戦派の資質を見いだしている。

もちろん、課題はたくさんある。「自力勝負は通用しないから、今のように前を追う脚力をもっと付けないと。練習不足かも。栃木ガールズには、荒牧聖未や青木美優というお手本がある。見習って欲しい」。師の言葉を知って、また発奮しそうな片岡の今後に期待したい。

【中島淳は作新学院高4番サードで甲子園へ!】ここを押すと読めます