私を揺さぶる、グランプリ-。12月16日からボートレース住之江で開幕する1年の総決算、SG「第40回グランプリ」に向けた特別企画「Road to THE GRAND PRIXキャンペーン」と題した企画の第3弾として、磯部誠(35=愛知)にスポットライトをあてる。過去に出場したGPの振り返り、今年にかける意気込みなど、愛知支部のトップレーサー2人が、年末の大一番に向けて思いを語った。(取材日=9月20日)。
◇ ◇ ◇ ◇
05年の6月某日、中学3年の磯部誠は、自転車を懸命にこいでいた。1時間かけて常滑に到着。植木通彦が優勝した笹川賞(オールスター)の直後、一般戦が開催されていた。友人と一緒にレースを初観戦。ボートレースの迫力に圧倒された。「びびった。舟の上に人が立っていた。エンジン音に水しぶき…。その時、選手になろうと思った」。中3の誓いから20年、磯部は3度目のグランプリ出場を射程圏にとらえる。
バレーボールに打ち込む少年だった。石川祐希(29=ペルージャ)は5学年下。一緒に練習した記憶もある。「僕が高校生で、彼は中学生。この子はうまいな、センスあるなって思ってたら、ああなっちゃった(笑い)」。バレー部の友人の家族がボートレース好きで、影響されて魅力を知ることになる。バレーボール選手が夢だった少年が、20年の時を経て、トップレーサーの1人となった。
GPは22年大村大会、賞金ランク14位で初出場。TR1stは4、1着。2回戦では4コースから見事なまくり差しでTR初勝利。勢いのまま2ndを2、2、5着で突破。GPでSG初優出を果たし、ファイナルは3着。「上出来でした」と振り返った。
23年はランキング5位で2nd発進。4、1、4着で突破した。優勝戦はまたも3着。「1回目は大村だった。僕は住之江のGPしか見たことがなかったので、自分が出場して、テレビで見ていたやつだと。すごく緊張感があった」。独特の雰囲気にのまれそうになりながらも、2年連続のファイナル進出。翌年へ向け、周囲の期待はふくらんだ。
迎えた24年は苦しんだ。SG優出1回、G1優出も1回、優勝は一般戦の2回。GP出場を逃した。「燃え尽きたではないけど、気持ちが入ってこなかった。成績も悪くてずるずるいって、なかなか変われなくて…」。伸びを求め、出足型に戻すなど調整面の試行錯誤も続いた。結果が出ないことが、メンタルに影響を及ぼす。負のスパイラルとも言える日々を過ごす中で、ずっとある言葉が、頭の片隅にあった。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)-。目的を達成するために、苦難や努力を耐え忍ぶ-。中学時代、国語教諭から贈られた言葉だ。「ボートの選手になりたいんですって言ったら、先生が、この言葉を贈りますと言ってくれた。中3の僕には響きましたね。いつも心のどこかにあって、大事にしています」。苦しい1年を過ごす中、気持ちは25年に向いていたという。「来年こそ、と思っていました」。
今年は年始の地元戦で優勝、3月には常滑周年を制した。SGはオールスターで優出6着、G1は優出3回、優勝1回(9月24日現在)。順調に賞金を加算している。リベンジの1年は、これからが大詰めだ。
「バレー部の友達に感謝ですね。当時は、ボートの話ばかりしないで、バレーを真剣にやってくれよ! って思ってましたけど(笑い)」。磯部をボートレースに導いた友人も、大切な言葉を授けてくれた先生も、きっと活躍を喜んでいるはず。苦しい1年を乗り越え、努力を重ねて3度目の年末へ。臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、結実させる。