これまでファイナンシャルフェアプレー(以下FFP)の導入が及ぼしている影響についてお話しさせて頂きました。その中で現在も業界を騒がせているパリサンジェルマン(PSG)。200億円を超える額で購入したネイマールを売ることが、非常に理解しにくい部分があります。同時に売ったバルサもバルサで、200億円超で買い戻すというのも、送金手数料だけで考えてもいくらかかるの?と感じてしまいます。今回は改めてフランスサッカーとPSGを中心とした“中東・カタール狂騒曲“についてお話ししたいと思います。

すでに以前リポートしましたが、フランスと中東には歴史的に深い関係があります。その歴史は1500年近くに渡り、まさにオスマントルコ帝国時代にさかのぼります。

1600年代に入り植民地支配が始まりそして1700年代にはヨーロッパの勢いに押されて現在の中東地域に狭められ、1800年代にはフランスの英雄・ナポレオンのエジプト遠征を皮切りにヨーロッパ勢が力を伸ばしました。1900年に入るとついにはアラビア半島に押し込まれてしまいます。しかし1900年代に中東に石油・天然ガスが発見され、大きく情勢は変わります。

この液化天然ガスに絞ってみてみると、オーストラリア、マレーシア、カタール、ナイジェリア、インドネシアなどといった国々が中心となって世界中に輸出されておりますが、PSG、フランスのいわゆる“太客“が実は日本になります。カタールの輸出入をみるとなんと韓国が20%、日本が19%を占めます。

中島選手の移籍金44億円などというところに目が行きますが、PSGを支えるそのマネーは日本に石油・天然ガスを売って得たものだとすると、ネイマールやカバーニ、そしてエムバペといったスーパースターの給与は日本からのお金で成り立っているといっても過言ではないのではないでしょうか。

毎年10月にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞にもカタール・マネーが流入し、賞金総額は6億5000万円と高額です。さらにはスポーツだけでなくパリのシンボルでもある凱旋門の目の前に位置するエトワール広場に面しているのはカタール大使館。フランスダッソー社の戦闘機を大量購入したのもカタール。そして2022年ワールドカップの収賄容疑にかけられているのもフランスの将軍ことプラティニ、そしてPSGの大ファンだったサルコジ元大統領・・・このようにフランス、カタールというキーワードにはお金にまつわるお話がたくさん出てきます。

そのカタールの財源が日本であることを考えると、日本が裏スポンサーとも言えるかもしれません。2022年W杯を支えているのは日本だった、というのは言い過ぎでしょうか。

日本人選手がより多く海外に出て行く可能性を秘めているとすれば、鍵となるのはカタールなのかもしれません。カタール・フランスラインをどこまで有効活用できるかは日本サイドのマネジメントなのかもしれません。【酒井浩之】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)