先日イングランドでクラブのファイナンシャル状況に関して動きがありました。FIFAが今年の2月に、ロンドンに拠点を置くチェルシーに対して18歳未満の選手の国際移籍に関する規定に違反したとして2020年1月の移籍市場において補強禁止の処分を言い渡しました。 チェルシー側は、不正はなかったとしてこの処分に対して異議申し立てを提出したものの、同5月に棄却。その後CAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴したということですが、この審議が今月の20日に行われると現地で報じられています。審議の結果によっては、来年1月の補強ができるのかどうかという部分で非常に大きな影響が出る可能性があります。今回はその18歳以下の選手の扱いに焦点を当ててみたいと思います。

実は同じくして、日本でも動きがありました。再来年を目処に海外から入学した高校生が公式戦に出場することができなくなるというもので、この場合の試合の対象は高校総体、高校選手権の予選を含む全ての公式戦となっており、実質留学生は出場不可ということになります。日本協会がFIFAからの指摘を受けて対応しているとのことで、まさに冒頭にある18歳未満のサッカー選手の海外移籍に関する案件と近しい案件であると捉えることができます。

元々の発端は、海外移籍前提で多額の金額を発生させて渡航させたものの、渡航後に金銭を受け取って姿をくらます代理人が増加し、代理人を信じて動いた選手は結果的に不法滞在扱いになってしまったことになります。同時に幼少期から国籍を無視して選手獲得をすることができれば、金銭的余裕があるクラブがより多くの将来的に期待値が高い選手を獲得することができてしまい、これがまかり通るとクラブ格差が広がるなど、勝負の世界と言え財力面が大きく影響を及ぼしてしまうという問題がありました。

日本に目を向けてみると、このルールに引っかかってしまったのがまさに今スペインで活躍中の久保建英選手。バルセロナに入団したものの、公式戦に出ることができず契約途中にして帰国。結局的にはプロ契約を勝ち取り、今ではライバルチームのレアル・マドリードに所属(今シーズンはマジョルカにローン・アウト)、当時は本当にどうなるのかわかりませんでした。昨今多くのクラブが、ブランディングという名目で人材発掘を目的としたクリニックやスクールを展開しておりますが、基本的なFIFAの現状のルールからいくと、どんなに有能であっても(例外を除いては)EU圏内のクラブに未成年で所属することはできないことになりますから、クラブの甘い誘いに乗ってしまうことは非常に危険です。月々の月謝や、登録費、そして短期留学費用などを考えても、本当にそのタイミングでその機会を子供・選手に与えるべきなのかというのは改めて考えなければならないと感じます。スペインで驚いたのは、お金をかけて幼少期からキャンプなどにきているのは特定の国の子供達であった事です。もちろん日本もそこに入っており、改めて国の豊さを感じることができたシーンでした。

このような国際的な動き、未成年の選手が欧州のクラブの練習に参加することは認められつつもその先がないに等しいことを考えると、この先久保選手のようなケースは基本的には起こらない可能性が高いと考えられます。そうなると、18歳を超えてサッカーの本場である海外を目指さなければなりませんから、そこまで待たなければならないことを考えると、幼少期から言葉や生活環境の違いに対していかに適応するかという部分のハードルはより高くなってしまい、日本人選手が若くして海外で活躍するシーンはもしかしたら今後少なくなってしまうかもしれません。FIFAファインナンシャルフェアプレーだけでなく、国際的な統一ルールは求められるものの、ルールを作れば作るほど活動に制限がかかり、多くの可能性そのものを小さくしてしまう、無くしてしまう方向にベクトルが向いてしまいかねないことがそこにはあり、まさにそう言ったことが日本サッカーにとってマイナスになってしまうかもしれません。【酒井浩之】


(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)