観客を迎えたJリーグの試合が7月10日から始まった。来場するファン・サポーターにはさまざまな制限が課されており、現在の運用で認められている行為は「横断幕の掲出」くらいだ。Jリーグのガイドラインには、8つの禁止行為が示されている。
<禁止されている行為>
・応援を扇動する
・歌を歌うなど声を出しての応援、指笛
・手拍子
・タオルマフラー、大旗含むフラッグなどを“振る”もしくは“回す”
・トラメガ(拡声器)を含むメガホンの使用
・太鼓などの鳴り物
・ハイタッチ、肩組み
・ビッグフラッグ ※観客がいない席に掲出する場合は容認される
スタジアムの雰囲気は昨シーズンまでと大きく変わった。それでも取材していると、リモートマッチ(無観客試合)とは比較にならないほど活気が戻ったように感じる。
1つ1つのプレーに対して、自然発生的な拍手が起こる。チャンスのときだけでなく、いい守備に対してもおくられる。
突破を防いで相手のCKになったとき、会場全体が「ここは拍手でいいのかな?」と戸惑う感じ。直接FKの前、拍手が集中を高める選手の邪魔にならないか気遣う感じ。すべてリモートマッチでは味わえなかったものだ。
アップに登場した選手たちも、しばらくサポーターの姿に見入っている様子だった。声を出して応援できないぶん、手をたたくことで選手を鼓舞しようとするサポーターの思いで、会場は上限5000人とは思えない雰囲気に包まれていた。
Jリーグのガイドラインで「手拍子」は禁止事項とされているが、この「自然発生的な拍手」については記載されていない。リーグ側も積極的に容認こそできないものの、試合展開に興奮した人間の心理として、不可避な行為だと判断しているのだろう。
“法の抜け穴”的なところはあるが、拍手はスタジアムでファン・サポーターが選手に思いを届けられる唯一の方法だ。応援に来られないアウェーチームのサポーターを思ってか、とあるスタジアムでは対戦相手のメンバー発表時に拍手が起こったと聞く。
ブーイングのないスタジアムを物足りなく感じるサポーターもいるだろうが、今しか味わえない優しい世界を存分に楽しみたいと思う。【杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)