<高校サッカー:鵬翔2-2(PK5-3)京都橘>◇決勝◇19日◇国立

 神懸かった優勝だ!

 「天孫降臨(てんそんこうりん)伝説」で知られる宮崎県代表の鵬翔が、京都橘をPK戦で下し、県勢初優勝を飾った。大会史上最多となる4度目のPK戦を制してミラクル勝利。83年の就任以来、苦労と試行錯誤の連続だった松崎博美監督(62)の努力がついに結実した。

 神懸かり的な粘り強さで、鵬翔が頂点を射止めた。準決勝同様2度のビハインドを追いついた。GK浅田卓人(3年)が「何か持ってますね」と振り返る今大会4度目のPK戦。京都橘は仙頭が右ポストに当てて外したのに対し、鵬翔は全員が左へ強いシュートを決めた。決着をつけた5人目の浅田はもみくちゃにされ、緑のピッチに倒れ込んだ。初めて地上に降り立ったという「天孫降臨伝説」で知られる宮崎らしさで、県勢初の優勝を手にした。

 DF矢野大樹主将(3年)が「自分たちはPKにツキがある」と言えば、浅田は「PKに持ち込めば勝つ自信があった」。今大会6試合中4度のPK勝ち。極度の緊張感を強いられる“1対1”に、なぜここまで強いのか。松崎監督は「技術以上に気持ちで押し切っている」と話した。

 雪による決勝延期もプラスに働いた。左膝の負傷が癒え、いないはずのエースMF中浜が間に合った。後半の頭から投入されると攻撃を活性化。4分に鋭いドリブルからCKを得ると、DF芳川隼登(2年)の同点ヘッドが生まれた。さらに敗色ムードが漂う39分、DF日高献盛(3年)の縦への突進からPKを獲得し、再び追いついた。

 終盤まで衰えぬ体力と精神面の強さが持ち味だ。松崎監督を中心に07年、同校のレベル向上を目的に創設されたジュニアクラブ「セントラルFC宮崎」の存在が大きい。1期生のGK浅田、DF矢野、原田、日高、芳川、FW高妻、北村ら中学から手塩にかけて育てられてきた主力が、試合を重ねるごとに成長した。

 昨年は関大、関学大や神戸、C大阪ユースなど格上との練習試合を重ねた。一方的に打ちのめされたが、得るものが多かった。昨夏の鹿児島合宿では全身がけいれんする選手が出るほど走り込み、自信もつけた。それが「ベンツ、ポルシェ、軽自動車でもなくダンプカー」(松崎監督)と評すパワーとなり、接戦やPK戦にも動じなくなった。

 攻守のバランス感覚にたけ、堅守速攻で頂点をつかんだ鵬翔。群雄割拠の高校サッカー界に、力強く割って入った。【菊川光一】

 ◆鵬翔高校

 1965年(昭40)に前身の宮崎中央が開校、89年から現校名となった。03年に付属中学が設置され、中高一貫校となった。サッカー部は83年創部で、OBに元日本代表の興梠慎三、増田誓志らがいる。所在地は宮崎市恒久4336。佐々木逸夫校長