日本代表FW本田圭佑(30=ACミラン)の先制弾が空砲に終わった。前半11分、出場したW杯予選では7試合連続となるヘディング弾でリードを奪ったが「想定外」と認めた2失点で逆転負け。得点した試合の不敗神話も12で途切れ、試合後は「気合」「負けず嫌い」と根性論を持ち出して日本の勝負弱さを嘆いた。

 負けてもマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた背番号4が、肩で息してピッチに立ち尽くした。本田は試合直後のインタビューを待つ間、左手に持ったタオルを力なく垂らし、ゴールを見つめた。後半32分に浅野のシュートが入ったように見え「自分の記憶と目が正しければボール2つ分は入っていた」。そう言って冷静になり、首を振った。「最悪で受け入れ難い。当然、負けなんて想定していなかった」。歯根に力を込めた口元に悔しさがにじんだ。

 13年まで過ごしたロシアを目指す最終予選。歓喜の第1歩の後、落とし穴が待っていた。前半11分の右FK。清武からの浮き球を最奥で待ち、体をくの字にした。上目遣いで首を振り、ワンバウンドでゴール左に突き刺す先制ヘッド。出場したW杯予選で7戦連発とし、自己記録を更新した。だが2点を返され、別の記録が途切れた。得点試合で負けたのは14年W杯ブラジル大会のコートジボワール戦以来。その後、12戦全勝だった神話が幕を閉じた。

 盟主のはずが、アジアで返り討ちに遭った。昨年1月のアジア杯準々決勝。本田がPK戦で外して敗れたUAEとの再戦で、今度は90分で負けた。もう論理的な思考を保てない。珍しい根性論を突然、展開した。

 本田 根本的な部分で日本はUAEより勝負弱かった。気合、根性、負けず嫌い。大事な部分が、地味に足りなかった。(能力の)数値は日本が上でも、数値で計れない部分で負けた。

 優位性が失われていることを認め「どこの国も強くなってきている中、日本に勝負強さが欠けているのは間違いない」。持論も付け加え「明日、変身して解決することはない。もっと海外に出ないと。海外組が100人いて、レギュラーが50人いて、そこから代表の定位置を争うようにならないと勝てない」。W杯で負けた後に訴えるような言葉を、アジアで言わされた。

 両軍最多6本のシュートを放ちながら勝利に導けない。5月末の代表合宿では左膝裏を痛め、6月のキリン杯を欠場。ほとんど経験のない筋肉系の負傷で、年を重ねたことによる体からの信号だと受け取った。7月はACミランの練習場ミラネッロの自室にこもり「1人合宿」で調整してきたが、結果は空砲。「すべてが終わったわけじゃない」とエースは強がるが、愛着あるロシアへの道が、いばらに覆われた。【木下淳】