東京オリンピック(五輪)世代でボランチの一角を担う川崎フロンターレのMF田中碧(21)は高校時代からサッカーノートをつけている。試合や練習後、気が向いた時に思いを記してきた。ただ、1月のU-23アジア選手権(タイ)のカタール戦後は、筆が進まなかった。前半ロスタイムに相手と接触し、ビデオ判定で1発退場に。先にボールに触れていたが、恨み言は口にしなかった。「悔しかったけど初めて自分の中で、なかったことにしたくなりましたね。思い出してない。試合すら見てないです、どれも」と肥やしにした。

昨季は相手の攻撃の芽をつみとる守備力に、攻撃力も急成長。リーグ24試合1得点で、新人賞に当たるベストヤングプレーヤー賞を受賞した。A代表デビューも飾った。それでも向上心は乾かない。「吸収するだけで終わってはいけない。圧倒するくらいの選手にならないといけない」。

東京五輪に向け、進化の下地にある熱い志と、冷静な自己分析力は大舞台でも生きるはず。「五輪はどうですかって聞かれるとすごく意識するけど、ただ世界と戦って勝ちたいだけ。ただそれが五輪なだけ」。悔しさをも糧に、大きな成長曲線を描く田中が、五輪出場後にサッカーノートに記す言葉を読んでみたい。【浜本卓也】

◆田中碧(たなか・あお)1998年(平10)9月10日、神奈川県生まれ。川崎Fの下部組織で育ち17年にトップチーム加入。18年9月15日のコンサドーレ札幌戦でJデビューを飾り、初ゴールも決めた。J1通算28試合2得点。177センチ、69キロ。