日本代表として3大会連続でワールドカップ(W杯)に出場した本田圭佑(33=ボタフォゴ)は、強烈なリーダーシップを発揮しながら世界の頂点を目指してきました。時には言葉で仲間や、世論を動かしながら「W杯優勝」を公言。日刊スポーツでは密着取材を続けてきた元担当記者が「本田の名言 トップ10」を独断と偏見で選出。その発言の背景を振り返ります。第2回は9位、CMにもなった、あのフレーズです。

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「昨日が(24歳の)誕生日だったので(運を)持ってるなと」

2010年6月、W杯南アフリカ大会の1次リーグ初戦、カメルーン戦で得点し、チームは白星発進。まさに、岡田ジャパンの救世主となった試合後の発言。

大会直前に岡田監督の抜てきを受け、ほとんど経験のない1トップで起用された。すると、自身のW杯初戦でまさに“1発回答”。決勝弾で、チームに勢いをつけた。

その後もデンマークとの第3戦で長距離無回転FK弾を決めるなど、大ブレークで日本は決勝トーナメントに進出。帰国時の丸いサングラス、金髪とその強気な発言、頼りになるここ一番での活躍ぶりで、完全にサッカー界の新たな象徴となり、ここから本田の時代が始まった。

しかし、本田もまだまだだったのか、その強烈なキャラクターが災いしたのか、この「持ってる」は、同年末に意外な形で“持っていかれて”!? しまう。

この年の新語・流行語大賞は早大斎藤佑樹投手(現日本ハム)の「何か持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているかを確信しました…それは仲間です」だった…。

ただ、その後の活躍もあってか2012年にはサングラスをかけ、真っ白なスーツ姿の本田を起用したアサヒフードアンドヘルスケアのタブレット「ミンティア」のCMが大々的に展開され「俺は持ってる」のフレーズは、お茶の間にも浸透していった。

CMそのままの姿で登場し、本田のものまねでブレークしたお笑い芸人、じゅんいちダビッドソンの活躍にもつながるという、予期せぬ相乗効果? もあった。

いちサッカー選手から圧倒的な知名度を得てスターへと立場をかえていく、ターニングポイントになった発言ともいえる。

無類の勝負強さを表現するような「持ってる」は、その後もW杯のたびに発揮され続ける。14年ブラジル大会、18年ロシア大会まで、W杯3大会連続で得点とアシストを記録するという偉業を成し遂げた。

本人は全く興味を示さないが、4度目のW杯、22年カタール大会でもやっぱり「持ってる」となる可能性も、ゼロとは言いきれない。(続く)