日本代表として3大会連続でワールドカップ(W杯)に出場した本田圭佑(33=ボタフォゴ)は、強烈なリーダーシップを発揮しながら世界の頂点を目指してきました。時には言葉で仲間や、世論を動かしながら「W杯優勝」を公言。日刊スポーツでは密着取材を続けてきた元担当記者が「本田の名言 トップ10」を独断と偏見で選出。その発言の背景を振り返ります。第4回は7位、海外から日本を見て、今なお抱き続ける考えを述べた約8年前の発言です。

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「日本は芸能人であったり影響力のある人でも、政治家でなければ、政治のことをしゃべるとたたかれる。『なんで?』と思う」

本田は黙っていられない。今も昔も、変わらない。2012年9月、当時所属していたロシア・CSKAモスクワの練習場で、日刊スポーツの取材に答えた。

移籍や間近に迫っていたW杯アジア最終予選については、かたくなに「しゃべりたくない」と言ったが「今の日本をどう思うか?」という質問に反応。車のエンジンを止め、せきを切ったように話し始めた。

その中で、今なお唱え続ける「持論」を、かなりのテンションで語っている。

本田 日本は芸能人であったり影響力のある人でも、政治家でなければ、政治のことをしゃべるとたたかれる。「なんで?」と思う。オレが政治についてしゃべったら「本田、スポーツ選手のくせに政治を語るな」と、たたかれるはず。多分、世の中の大多数がそう思うはず。でも、そうではないんじゃないか。オレも日本国民。政治のことを語る資格があるはず。日本をこうしたい、と思うことをしゃべる。それが真剣な発言だったら、足を引っ張るんじゃなく、議論する環境をみんなで前を向いて作っていくべきなんじゃないか。今は、何でもネガティブにとらえ、悪いところをクローズアップしてしまう。これは日本の悪いところだと思う。もっと素直にならないといけないし、もっと謙虚にならないといけないと思う。

この発言から約8年。現在、世界中が新型コロナウイルス感染拡大という想像もしなかった危機的状況に置かれている。今までの日常は非日常、そして非日常が日常になり、国難ともいえる状況にある。

世界中がそうであるように、日本でも政治のリーダーシップがより一層求められ、そんな声の高まりがある。こんな状況を見越していたわけではないだろうが、約8年前、26歳だった本田の言葉は、ある意味、的確で本質を突いている。

実際、ここ最近も、5月上旬に歌手きゃりーぱみゅぱみゅがSNSで「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ付きでツイート。その後、削除するような“騒動”があった。

今なお、芸能人など著名人の政治的発言は歓迎されているとは言いづらい状況で、風当たりは強い。

本田は、4月26日にツイッターで「日本ほどアーティストや俳優(女優)やアスリートなどが政治のこと話さない国はない。経済もそうやけど、もっと話そう。あなたの国のことだ!」などと8年前の取材時とまったく同じ思いをツイート。この点で、一切ブレはない。

なお、16年7月には自民党本部で安倍晋三首相と面会するなどした経験も持つが、この時も「自分は、サッカーでここまできた。サッカーでどう、社会に恩返ししていくかが今の自分のテーマ」と述べるなど、政界転身については、一貫して否定している。

(続く)