日本サッカー協会は21日、千葉・幕張に3月に完成した高円宮記念JFA夢フィールドのクラブハウス内部を報道陣に初公開した。

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JFA夢フィールド内には、新型コロナウイルスの検査が受けられる設備がある。日本サッカー協会は500万円でスマートアンプ法を利用した検出機械を2機購入し、診療所許可を得ている夢フィールドに置いた。PCR検査キットも常備している。各年代、フットサル、女子など代表の合宿前に検査する。スマートアンプ法は、自前だけに1時間程度で検査結果が出る。費用は2500円程度で日本協会の負担も少ない(PCR検査は通常1万~3万円)。

同施設は、帰国した欧州組の日本代表選手が再び欧州に戻る時にも有効に使われる。出国前に検査を受け、陰性証明書をもらって所属クラブへ戻る。検査結果が出るまでの1時間、森保監督や代表スタッフとコミュニケーションを取ることもできる。

自前の検査システムがあるだけに、多くの協会関係者やサッカーファミリーが検査を受けていると思ったが、そうでもない。協会関係者は「協会職員や関係者がどんどん検査を受けると『なんでサッカーだけ?』と批判されることもある」という。そのため、各年代代表選手のほかには、活動にかかわっている人、選手と接触する可能性がある職員ら最少人数にしぼって受けている。

せっかく、設備が整っているのに、もったいない話だ。検査を受けることが批判の対象になってはいけないし、そう思われる雰囲気が作られているとしたら、それは問題だ。Jリーグがリーグ戦を再開する際、2週間に1度のPCR検査を義務づけたが、その決定の際にも「なんでJリーグだけ?」と言われることをすごく気にしていた。

08年北京オリンピック(五輪)。サッカー日本代表は3戦全敗で1次リーグ敗退した。敗退後の帰国便。敗れたサッカー選手はビジネス席、たまたま同便だったメダルラッシュの主役となった、ある競技の代表らはエコノミー席。メダルを首に提げた選手から「同じ日本代表なのに、なんでサッカーだけいい席なの?」とJOC関係者が言われたことがある。

JOCが用意したエコノミー席から、サッカー協会が選手団全員の差額分を払ってアップグレードしただけの話。当時は世間の目を気にして文字にはしてないが、10年以上たったので書くと「我々は営業努力をしてお金をためて選手がいいパフォーマンスを出せる環境を整えている。ビジネス席はその一環です。他の団体も選手のためにもっと営業努力をしてほしい」と当時のサッカー協会幹部は力説している。

人気のない競技はいまだ、遠征時に代表選手が遠征費の一部を負担する。サッカーではあり得ない。むしろ日当をもらって代表活動に参加している。サッカーは競技人口も多く、スポンサー料も他の競技団体よりケタ違いに多い。だから、自覚を持って率先してもらいたい。世間の目を気にせず、どんどん進化したモデルケースを作っていってほしい。そのうち「なんでサッカーだけ?」が「サッカーに続け」になる時代が来るはずだ。【盧載鎭】