ハリル采配、今野システムはG大阪“真似”ジメント

後半、チーム2点目を決め大喜びでピッチを駆ける今野(撮影・PNP)

<W杯アジア最終予選:日本2-0UAE>◇B組◇23日◇UAE・アルアイン

 日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)が28日のW杯アジア最終予選タイ戦(埼玉)に向け「タイに勝てなければ、UAEに勝った価値がなくなる。愚かなことは絶対にしてはならない」と選手に伝え、引き締めた。23日に敵地アルアインで難敵UAEに2-0で完勝し同日、成田空港にチャーター機で帰国。UAEからのアウェー初勝利で勝ち点を13としB組2位をキープ。同戦ではMF今野泰幸(34=G大阪)の起用など采配ズバリ。そのハリル采配を掘り下げる。

 ハリルホジッチ監督は誇らしげな表情で成田空港に到着した。ファンの声援に右手を上げて応えるなど上機嫌。無理もない。敵地UAEで会心の勝利を挙げたのだから。勝ち点3をつかんだ3つの理由はこうだ。

 <1>今野起用はJヒント 中盤を従来のトップ下+守備的MF2枚の三角形から最終予選で初めて逆三角形に変えた。この“Vライン”で勝利を引き寄せた。今野の働きが抜群。どれだけすごかったかは隣の香川の言葉を借りる。「チームには12人いたみたいだった。すごいとしか言いようがない。脱帽です」。

 この起用は「ガンバの試合を3試合追跡して、アイデアがわいた」という。そういえば、今野が活躍し、本田を差し置き、いの一番に途中出場させた倉田も躍動した5日の柏レイソル-ガンバ大阪戦(柏)を視察後は、いつになくご機嫌だった。ここが勝利の源泉。就任以来、Jリーグのレベルを嘆き、招集も海外組偏重とし批判もあったが、しっかり視察し国内組の今野をキーマンに据えて勝った。ヒントをくれたG大阪長谷川監督にも、指揮官にかわって御礼を伝えておくべきだろう。

 <2>O・アブドゥルラフマン封じに成功 相手の大黒柱に仕事をさせなかった。DF長友がガツンと行き、本来の右MFから左にポジション移動させた。左利きのテクニシャンは左に回って威力半減。長友は「監督から(日本の)右は攻撃的、左は守備的と言われた」という。2得点は右の久保から。戦術で支配し「アウェーで試合をコントロールできると証明できた」。同じアウェーで極端な守備的布陣で引き分けた昨年10月のオーストラリア戦後に戦術で試合を支配したと胸を張ったが、日本に戻ってほとんど評価されていないと知り、ショックを受けた。このトラウマも払拭(ふっしょく)した。

 <3>川島起用は賭け そしてバクチにも勝った。試合勘のない川島のサプライズ起用は「リスクはあったが、経験が必要な試合」と送り出したら当たった。一時は招集に難色を示していたベテラン勢にも光を当て、頼って勝った。

 砂漠のオアシスといわれる都市アルアイン。ロシアへと向かう長く険しい道のり。ハリルホジッチ監督は自らの手で、この地をオアシスに変えた。【八反誠】