前代表監督アギーレ氏が特別評論 V立役者は川島

日本代表について語る前監督のアギーレ氏(撮影・木下淳)

 前日本代表監督で、現在アラビアン・ガルフ・リーグ(UAE1部)のアルワフダを率いるハビエル・アギーレ氏(58)が、日刊スポーツに特別評論を寄せた。チームの練習があったためテレビ観戦。1点リードの前半20分に1対1を止めたGK川島永嗣(34)が勝利の立役者とし、ハリルジャパンの組織的な守備も評価した。【聞き手=木下淳、山本孔一通信員】

 日本の皆さん、オヒサシブリデス。愛する国を離れて2年。代表はもちろん、Jリーグ、ACLを今でもチェックしている中、ここUAEで日本との試合を迎えられて格別だった。10番のFWマタルとDFカマリ(アルワフダ所属)が先発していたので大きな声では祝福できないが、日本は組織的で運動量があり、個々の対決で上回っていた。すべての面で日本が凌駕(りょうが)した試合だった。

 勝利の鍵はGK川島のセーブにあった。UAEの唯一の好機は(前半20分の)1対1だったが、川島がよく止めた。もちろんFW久保の早い先制点が相手をナーバスにしたが、6分後にUAEが1-1にできていれば落ち着けたはず。会場も日本への重圧を強めたはず。川島はシュートだけでなく、それも防いだ。FW以上に素晴らしいGKが必要という私の哲学を、彼が正しいと証明してくれた。

 自分が15年アジア杯で正GKを任せた川島は、今回が約9カ月ぶりの出場だった。メッスでもリザーブリーグに出る程度だが、たとえ練習しかできなくても、欧州にいる方が日本で試合に出るよりも多くを得られる。成長する上で、試合に出続けることは実は一番ではない。大事なのは厳しい状況に身を置き、諦めずに戦うこと。ママの近くでプレーし、おいしい料理を食べる日々よりも何十倍も重要だと川島は知っている。

 私の時は、UAEにアジア杯で35本ものシュート(相手は3本)を放ちながらPK戦で敗れた。PKは空にコインを投げるようなものだが、当時はボールを保持し、支配し、多く攻撃した。今のチームを悪く言うことは日本を愛する自分の心が許さないが、ハリルホジッチ監督のスタイルは浸透してきたし、より組織的でダイレクトなサッカーをするようになった。オーガナイズされた守備は自信を持っていい。今回は(吉田)麻也や今野が土台となって、乱れることなく我慢する術をもたらしてくれた。

 次のタイ戦も気は抜けない。彼らの成長は今予選のサプライズだ。日本が成長しても、他国はそれ以上の伸び率で向かってくる。必要なのは「ホームで絶対に勝ち点を譲らない」という姿勢とメンタルの強さ。まだ教えたかったことは多いが、日本はW杯に行かなければいけない。混戦を突破し、ロシアに到達することを祈っている。

 ◆アギーレ氏の近況 スペインでの八百長疑惑による告発(現段階で進展なし)を理由に、15年2月3日に日本協会が契約解除。同年6月、UAE1部アルワフダの監督に1年契約で就任した。昨季はリーグ杯を優勝に導き、リーグ戦も3位。契約を1年延長し、今季はプレーオフを勝ち抜いてACLに参戦している。

 ◆ハビエル・アギーレ 1958年12月1日、メキシコ市生まれ。現役時代はMF、DFとしてメキシコ代表で活躍。自国開催の86年W杯で8強入り。95年に指導者となり、同国代表監督として02年W杯で16強に導いた。スペインのオサスナ、Aマドリード監督を歴任し、10年W杯で再びメキシコを率いて2度目の16強進出。サラゴサ、エスパニョールも指揮した。14年8月に日本代表監督に就くも解任。家族は夫人と3男。