コルジャ仙台鈴木が女子ブラインドサッカーTに意欲

シュート練習を行うコルジャ仙台の鈴木(撮影・秋吉裕介)

 視覚障がい者による5人制サッカー初の女子国際大会「女子ブラインドサッカートーナメント」が2日からオーストリアの首都ウィーンで開催される。同大会へは、日本代表として仙台市のブラインドサッカークラブ・コルジャ仙台所属の鈴木里佳(27=宮城・登米市出身)が出場する。鈴木は「日の丸の実感はありますね」と決意を語る一方で、「でも(レベルに)ついていけない。日本代表と語っていいのか…」と複雑な心境ものぞかせる。

 競技に携わってきた期間は約8年。ただ、選手ではなくサポート役が長かった。鈴木は言う「選手で入る女子はいない」。そもそもブラインドサッカーの国内競技人口は約400人。去年の国内リーグは15クラブで試合をしたが、男女混合。体格差を考え、競技に踏み込めない選手がほとんどだ。

 鈴木の現在の視力は右が0・08、左が0・02。高校までは普通科の学校に通ってきた。大学は視覚と聴覚に障害があることが入学の条件である唯一の国立大の筑波技術大に進学。同大学のサッカークラブ(アヴァンツァーレつくば)に入部した。

 09年1月の日本選手権が仙台大で開催されていたので初めて同行。「日本一になり感動した」と、そこから競技にのめり込み、同年3月には初めて非公式大会に参加。ただ公式戦となると、選手は男子がほとんど。「男子は当たりが強いので、やりづらさはある」。サポート役に徹した。

 卒業後に地元に帰り、12年に運営担当の増田茂樹さん(40)らとコルジャ仙台を設立。当初は人数不足もあり、サポートではなくガイド(攻撃時に選手にゴールの位置や距離、タイミングなどを声で伝える役)を務めた。ただ競技は未経験で技術的指導ができないもどかしさもあった。創立5周年を迎えてクラブの規模も大きくなってきた。「視力も限界があった。そろそろガイドは別の人に任せようかなと思っていた」と悩んでいた。

 そんな時期に女子代表が設立された。女子練習会で以前から親交があった、代表の村上監督に誘われた。「代表でやってみたい気持ちは強かった」。初合宿の3月はFWだったが、2回目の4月合宿で、DFにコンバートされた。

 初の国際大会。優勝したい気持ちはあるが、「女子だけでチームをつくるのは大変。今の自分たちがどれくらいできるのかすらわからない」。開催日時場所は決まっているが、出場国の情報が全く入ってこない。比較対象がないため、実力にまだ自信を持てない。「体力、空間認知能力がまだまだです」。完全な暗闇の中で行うため、初心者は場所がわからなくなることが多い。だが「(代表選手で)一番長く競技に関わっていますね」と言うように、競技の本質は分かっている。すでに状況把握はお手のもの。クラブの練習でも、落ち着いて足元に来たボールをシュートしていた。

 「今の自分がどのくらいできるのか知りたい。これを機に、女子代表を目指してくれる選手が増えてくれれば」。今大会後には7月の日本選手権から国内公式戦デビューを切る予定。鈴木の挑戦がこれから始まる。【秋吉裕介】