ハリル監督「がっかり」王手 守りきれず消耗ドロー

前半、先制ゴールを決めガッツポーズを見せる大迫(左)(撮影・河野匠)

<W杯アジア最終予選:日本1-1イラク>◇B組◇13日◇イラン・PASスタジアム

 日本(FIFAランク45位)がイラク(同120位)と1-1で引き分け、W杯6大会連続出場に王手をかけた。イラクの政情不安もあり、中立地イランでの開催。気温37度。厳しい暑さの中で消耗戦となり、前半8分にFW大迫勇也(27=ケルン)が決めた1点を守りきれなかった。既にW杯出場の可能性が消えていた相手から最低限の勝ち点1を何とか取り、次戦8月31日のオーストラリア戦(埼玉)に勝てば本大会出場が決まる。

 引き分けに終わると、ハリルホジッチ監督はベンチに腰掛けたまま動けなかった。気持ちを落ち着けるのに5分かかった。ようやく立ち上がる。その顔は日に焼け、真っ赤。W杯ロシア大会行きの切符に王手はかけたが、すでに突破の可能性が消え消化試合だったイラクから、勝ち点3を奪うことはできなかった。テレビのインタビューに開口一番「ちょっとがっかりだった」と言い、その後の会見も沈んだ声だった。「もちろん、まったく満足していません。この試合に勝つためにここに来た。交代も前もってプログラムしたが、けがのせいでできなかった。最後の15分は、まったく違う戦略、速いFWを入れようと思っていたが…」。

 先制点を守り抜けなかった。予期せぬ負傷も続いた。後半17分、頭を強打したMF井手口のため1枚目の交代カードを切った。そのまま病院に運ばれるほどのダメージだった。後半25分にはFW原口に代え、MF倉田を投入。「疲労困憊(こんぱい)だった」とみる指揮官の判断を尊重しつつ原口は「ああいう時間帯こそ、僕みたいな選手が頑張り切れると思っていた」と話す。早い仕掛けが、采配を狂わせた。

 後半27分に同点とされると、酒井宏が倒れ、担架で退場。最後のカードで最終ラインにDF酒井高を投入せざるを得なくなった。15分以上を残して、ジョーカーのFW乾、浅野を送り込めなかった。

 左サイドではFW久保が足をつり、GK川島は右すねに相手のキックを受け、しばらく動けなくなった。顔色を失った指揮官の髪が強風、熱風で揺れた。この日、先発メンバーで勝負に出ていた。3トップに右から本田、大迫、久保を並べ、トップ下に原口を据えた。MF香川や今野、山口とけが人が続いた中盤では、ダブルボランチにともに最終予選初出場の井手口と遠藤を起用した。「ウルトラC布陣」も、驚くほどの暑さで消耗戦になり、効果は半減した。

 引き分けで王手はかかった。ただ、残り2試合はともに勝ち点1差のオーストラリアとサウジアラビア。強豪との直接対決に、素直に王手と喜んではいられない。指揮官は「オーストラリア戦が決勝戦ということになった」と大一番へ腹をくくった。【八反誠】

 ◆1勝で出場権 日本は残り2試合で1勝すれば自力で出場権を得られるが、勝てない場合は日本戦以外にタイ戦を残すオーストラリア、UAE戦を残すサウジアラビアに抜かれ3位転落の可能性が出てくる。