大迫勇也の半端ない自覚「W杯結果は僕の出来次第」

練習で植田(中央)と競り合う大迫(右)。右後方はハリルホジッチ監督(撮影・江口和貴)

 ドイツ・ブンデスリーガのケルンに所属する日本代表FW大迫勇也(27)が、2度目のW杯(ワールドカップ)に向かう覚悟を打ち明けた。19日から始まった日本代表のベルギー遠征合流前に、ケルン市内で取材に応じ「W杯の結果は自分の出来次第」と力強く宣言。開幕まで3カ月を切ったロシア大会へ、不動の1トップが自負を口にした。スカパー!のサッカー専門番組「スカサカ!ライブ」の人気コーナー「今まさに聞く」では元日本代表DF岩政大樹(36)との対談が実現した。

 森の中に開かれたケルンの練習場で、大迫は味方選手に激しく体をぶつけていた。気温が氷点下10度を下回る中、選手たちから湯気が立つ。「代表の前にクラブ。実力と自信をつける場所はここ」。そこから車で1時間半と近い、雪の舞うリエージュへ。練習初日。大迫はジョギングで最後方を走った。隣には半年ぶりに招集されたFW本田。笑顔で言葉をかわす。日本のために戦う10日間へ、頭を代表モードに切り替えた。

 合流前には、インタビューで代表への覚悟を語っていた。ハリルホジッチ監督の信頼は厚く、ロシア行き当確の1人と目される。代表復帰した16年11月以降、出場した9試合にすべて先発。しかし「正直、気にしてない。『必要なければ選んでくれなくていい』。それくらいの開き直り、攻めていく気持ちでいい」。28歳で迎えるW杯へ、臆することない精神状態にある。

 4年前のブラジル大会はコートジボワール、ギリシャ戦に先発も無得点。1分け1敗で迎えた最終コロンビア戦でスタメンから外され、ベンチの中で敗退の笛を聞いた。「悔しさ、ふがいなさしか味わえなかった。できない自分がいた。ただそれだけ」。もう出場するだけでは意味がない。

 大会後に移籍したケルンで牙を磨き直した。ドイツは娯楽が少なく、サッカーを愛する国民が多い。「スポーツする人間にとって本当に素晴らしい環境。この国に来て、心の底から『サッカーって楽しいな』と思えるようになった」。失意の大迫には心地よかった。

 昨季は自己最多の30試合7得点。チームを5位に押し上げ、25年ぶりとなる欧州リーグ出場権の獲得に貢献した。今季前半は過密日程を初体験。「木曜にセルビアで試合して金曜の朝6時に帰ってきて、土曜調整、日曜にリーグ戦。シーズン中なのに対人練習もバチバチやるし。そこに代表も重なってきて」。チームは計13人もの負傷者を出し、大迫も年末年始は肺炎で離脱した。強行出場を続けた結果。同時に、代えの利かない存在であることを際立たせた。

 「ようやく万全」と笑う今は、絶好調だ。日本人FWでは高原、岡崎以来となるブンデス通算100試合に2月26日ライプチヒ戦で到達した。ケルンでは攻撃の「全権」を任され、大迫がボールに触ってリズムが刻まれる。ポストプレー、パス出しに守備。その上で「点を取るために、わざと練習で守備をサボってみたり。いかに『戻ってこい』から『前に残っとけ』と言わせるか、毎日が勝負」。今月18日のレーバークーゼン戦では、2戦連発となる今季4点目に加え、計8回あった決定機のうち6回に絡んだ。

 代表でも、より得点を求められる。「ハリルホジッチ監督から、すごく言われる。元FWだからか、映像を見せられながら『こうやってゴール前に入っていけ』と。だけど…」。例えば相手の背後を突く動きも必要だが「監督から言われたことしかやらないなら誰が出ても同じ。自分は嫌。いい意味で割り切って自分にできること、自分しかできないことをやりたい。まず自分にボールが集まるように」。前線で起点になった上でゴールに迫っていく。

 精神的にも充実の一途をたどる。昨年11月のブラジル、ベルギー戦では、同ポジションの岡崎に本田、香川の「ビッグ3」が初めて全員招集されなかった。高まる責任感。日本を引っ張る思いが熱くほとばしった。

 大迫 正直、W杯の結果は僕の出来次第で変わってくる。それくらいの気持ちで準備しないといけない。

 2度目のW杯。「戦うのは前提だけど、楽しみしかない」。ドイツで対戦し「半端ない」と思ったFWは第3戦の相手ポーランドのレバンドフスキだ。「ゴールに対して貪欲。どこからでも、苦しい時でも点が取れる」。欧州予選10戦16発の男を筆頭に難敵だらけの舞台だが、引く気はない。「W杯でゴールを決める」夢へ-。まず親善試合のマリとウクライナに勝ち、日本国民の夢も膨らませる。【木下淳】

 ◆大迫勇也(おおさこ・ゆうや)1990年(平2)5月18日、鹿児島県加世田市(現南さつま市)生まれ。鹿児島城西高3年時の全国選手権で、1大会10得点の最多記録(準優勝)をマーク。敗れた相手が言った「半端ないって」が代名詞になる。6クラブ争奪戦の末、09年に鹿島入り。13年に19得点でベストイレブン。14年1月にドイツ2部1860ミュンヘンへ移籍、6月にケルン移籍。家族はモデル三輪麻未夫人と長女。利き足は右。182センチ、71キロ。血液型O。

 ▼スカパー!の24時間サッカー専門チャンネル「スカサカ!」では、毎週金曜午後9時から「スカサカ!ライブ」を放送中。23日放送から番組MCに元日本代表DF岩政大樹と安藤幸代を迎え、さらにパワーアップ。リニューアル1回目の放送では、岩政の人気コーナー「今まさに聞く」に大迫勇也が登場する。

 無料放送の23日に前編(午後11時30分から)、30日に後編(同9時から)。未公開部分も含めた完全版は特別番組で4月6日午後8時からスカサカ!(CS800、プレミアムサービス580)で。スカパー!はドイツ・ブンデスリーガの18-19年から2シーズンの独占放送権・配信権(地上波を除く)を獲得。ブンデスリーガの動向にも注目。