日本協会、売られたデュエルは誠意を持ってスルー

自宅の玄関に仁王立ちし、日本協会への不満をぶちまける前日本代表監督のハリルホジッチ氏(撮影・松本愛香)

 サッカー日本代表監督を電撃解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏(65)の怒りを日本サッカー協会は11日、冷静に受け流した。10日に同氏が自宅のあるフランスで日刊スポーツの直撃取材に「これはウソだ、でっち上げだ、陰謀だ」と怒り、近日中に日本に戻り会見で思いをぶちまけると予告。それを受け日本協会は「引き続き誠意を持って対応していきます」などと大人のコメント。静観の構えだが、両者の溝は埋まりそうにない。遺恨は根深そうで、同氏は早ければ来週中に再来日する見込みとなった。

 フランス北部リールにあるハリルホジッチ氏の自宅前には、テレビカメラ3台を含む日本からの報道陣がいた。11日午前。インターホン越しに女性が対応。「旅行に出て留守にしている。来週まで戻らない」と主役? 不在を告げた。前日10日とは対照的に、静かだった。

 ハリルホジッチ氏が監督時代、日本に根付かせようとしたデュエル(球際の攻防)はフランス語で「決闘」を意味する。電撃解任され怒り心頭に発した激情家は10日に自宅前で「これはウソだ、でっち上げだ、陰謀だ」と解任が不当であるとまくし立てた。

 ただ、日本協会は冷静だった。この日、これらの発言を受け大人の対応。次のようにコメントした。

 「現状ではハリルホジッチさんからJFAに対してコンタクトはありません。引き続き誠意を持って対応してまいります」

 9日に都内で会見した田嶋会長は「礼を尽くし、直接言うことを選びました」とわざわざパリまで行って、解任の非情通告をしてきたと説明した。その誠意は通じなかったようだが、それでも冷静さを保っていられるのは、同会長が解任前、法務担当者と丁寧に契約書を読み込んだ上で、渡欧して通告しているからだ。

 協会には、手続き上の問題点はないという確かな認識がある。売られた“デュエル”は誠意を持って黙殺する方向だ。コメントの「ハリルホジッチ“さん”」との表現も、決別の事実を鮮明にした。

 サポーターに対し、自らの口で説明したいという強い思いを持つハリルホジッチ氏は、近日中の再来日を予告している。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いは、相変わらずだが、解任後の会見となれば異例中の異例。1度火がつき、しゃべり出したら止まらない“ハリル砲”。その威力はいかほどだろうか。【八反誠】

<ハリルホジッチ氏の発言要旨>

 ▼記者の直撃に「あなたの仕事は理解できる。昨日も私の電話は鳴り続けていた。139件だ。ジャーナリストは誰も(解任劇を)理解できていない。だから世界中の知人から電話がくる」

 ▼今の気持ちは「スカンダラス(けしからん)」。(誰に対してか? と問われ)「自分に対してだ。セ・ラ・オント! セ・ラ・オント!(恥だ、恥ずべきことだ)」

 ▼解任理由がコミュニケーションの問題とされたことに「コミュニケーションも3年間にわたって存在していた。ただ、最後の合宿だけみんなは日本語、私はフランス語を話しただけ」

 ▼田嶋会長に「田嶋会長は何も説明していない。存在しない話を、いったいどう説明するというのだ。これはウソだ、でっち上げだ、陰謀だ。何人かの人間が裏で糸を引いていたようだ。憤慨だ。こんな終わり方は受け入れられない」