森保日本、露呈した逃げ切れない現実と運営面の課題

日本対ベネズエラ 試合開始41分前にスタジアムに到着した日本代表を乗せたバス(撮影・江口和貴)

<国際親善試合:日本1-1ベネズエラ>◇16日◇大銀ド

森保ジャパンが前代未聞の渋滞トラブルに巻き込まれた。サッカー日本代表(FIFAランキング50位)が16日、大分銀行ドームでベネズエラ(同29位)と対戦。会場に向かう高速道路で渋滞にはまり、到着が約50分も遅れた。一方で午後7時30分の開始は強行したため、ウオーミングアップ時間を削られて試合を迎えた。DF酒井宏樹(28=マルセイユ)の代表初ゴールで先制したが後半に追いつかれて1-1。森保一監督(50)は史上初の初陣からの4連勝を飾れなかった。

ファンも間に合わず空席が目立つ中、試合は始まった。予定通り、だが、定刻だったのはキックオフ時間だけ。GKシュミット以外の先発10人は着替えと室内での準備運動が精いっぱいで、人工芝の上でワンタッチパスをしただけだった。初めてピッチに立てたのは整列時。記念撮影の後、堂安がサイドラインを全力疾走で往復したように、強引に調整した。森保監督も「外でボールを使う、息を上げる、長い距離を走る、という試合を想定した準備はできなかった」と認めた。

国内の国際Aマッチでは前代未聞の出来事だった。チームはキックオフ90分前の午後6時を目標に、宿舎を出発。高速の大分道に入ったところで渋滞に巻き込まれた。2車線とも動かない。通常15~20分で済むはずが、90分超。この車中から悲痛な叫びを上げたのが選手だ。午後6時3分、槙野が「バスを通してください。すいません…お願いします!」とツイートし、吉田も1分後に「右側車線あけてください!」と引用した。狭い空間、立ったり座ったりを繰り返し、懸命に体を動かした。一方で現実として、試合開始1時間前に両軍の選手と審判が不在の異常事態に陥った。

結局、予定より1時間ほど遅い6時49分=開始41分前に到着。大分県警本部によると、主因は試合開催に伴う自然渋滞だった。最後はパトカーが先導。森保監督は「間に合わない」と覚悟もしたが「警察の方々、道を空けてくれたサポーターのおかげ」と感謝し、選手には穏やかな口調で「アクシデントはあったけど『アグレッシブに戦いを挑もう』と、今までと同じことを求めた。私が変更を余儀なくされたことは何もない」。6時40分から30分間の予定だったアップが6分間に短縮されても、日本協会の田嶋会長が「みんな何事もなかったように見えた」と驚くほど、平静だった。

試合は南米の実力国を相手に先制した。前半39分に酒井が初ゴールを奪ったが、後半36分に同点PKを献上。地元九州で、森保監督は史上初の初陣からの4連勝を逃した。ただ、条件は同じ。ベネズエラの到着は日本より5分早いだけだった。露呈したのは、逃げ切れない現実と運営面の課題。警備体制が異なるため単純比較できないが、ワールドカップ予選や東京オリンピックならば背筋が凍る。アップ時間を削ったことで負傷者が出た可能性もあった。善戦も、美談にはできない。【木下淳】