W杯から1年 分析官が考える「本当の敗因」/中

後半23分、長谷部のパスミス(上)と同24分、日本の1失点目

<W杯ベルギー戦から1年 悪魔の14秒その裏側(中)>

「悪魔の14秒」。日本はワールドカップ(W杯)ロシア大会の決勝トーナメント1回戦で、悪魔のようなベルギーのカウンターに屈した。あの間、誰かがファウルでも何でもいいから、どこかで止められていたら…。敗因は14秒、とみられがちだが、日本サッカー協会(JFA)が考える敗因は他にあった。

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日本代表の分析を担当するJFAテクニカルハウスの片桐央視リーダー(35)は「西野監督以下、全スタッフがあの14秒で負けたとは思っていない。そもそも14という数字も知らなかった。負けた一番の原因は、1失点目。そして2失点目と考えている。いずれも自分たちのミスから生じたもので、大会後のスタッフミーティングではアンダーカテゴリーも含め、すべての代表選手に徹底して伝えようと意見が一致しました」と分析内容を説明した。

まず1失点目。2-0とし、相手の反攻が激しくなった。194センチのフェライニを入れて、パワープレーも織り交ぜてきた。中盤のマークはいっそう厳しくなり、耐える時間がより長くなる。その中でも日本は、カウンターや中盤の連係で防戦一方となることなく粘って戦った。

ギリギリの攻防。しのぐときの、ちょっとしたミスが命取りになることがある。相手の勢いに油を注ぐことにもなる。最初の失点がまさに、それだった。中盤で長谷部がボールを持って右に展開しようとした時、香川選手は寄った。長谷部が蹴ったボールが香川の背中に当たり、こぼれ球を拾われ、相手の2度のスローインの末にCKを献上。そのCKの守備で乾のクリアが敵陣に飛ばず、そこからの頭での折り返しが、不運な形ながら失点になった。

片桐氏 本来の乾選手の技術なら、大きく正確にクリアできたはず。長谷部選手の視野なら、香川選手にぶつけなかったはず。香川選手も、意図があって近寄ったはず。断定はできないけれど、その中で長谷部選手とのイメージが共有できず、ズレて、ミスにつながったのかなと。もちろん、開いてパスコースをつくるというのは選択肢の1つではあったけど、ちょっとした積み重なりを相手に突かれ、失点後は完全に流れが向こうにいってしまった。

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2失点目のきっかけとなったのも、3失点目と同様に日本のCKからだった。ショートコーナーで得点機をうかがったが、読まれてしまった。

片桐氏 ショートCKは相手の守備の仕方にもよるが、2対1の数的優位をつくることができるので、日本も行うこともある。そこにはリスクもあり、ボールを奪われると人数をかけた分、相手のカウンターにつながる危険性もはらむ。そのため、やり切ることが鉄則。日本はそれまでも何度か試みたので相手はそれを認識していて、あの時、サイドに人数をかけてきた。そこでボールを中央へ上げられず、相手に奪われ、カウンターを許した。何とか昌子選手のブロックでCKとなったが、そのCKから同点に追いつかれた。カウンターを得意とするチームのため、やり切る必要があった。2失点とも押し込まれたわけではなく、自分たちがボールを持っている状況だったのに。そこで失点してしまったことが課題と受け止めている。

この2失点と「悪魔の14秒」は映像でまとめられ、将来を担う世代別の代表にも見せている。2度と同じミスを繰り返さないために-。最終回は、ある選手の言葉が心に響いた。【取材・構成=盧載鎭、木下淳】

<試合後のコメント>

▼MF長谷部 試合運びや勝負面で甘さが出た。不用意なボールの取られ方などミスが重なって失点した。あと1歩なのか、何歩なのか。ベルギーがどれだけ先にいるのか知るのは難しい。

▼MF乾 悔しい。こういう負け方は特に悔しい。

▼FW大迫 こういう結果になって申し訳ない。本当に悔しい。2点リードしてからの試合運びが良くなかった。1点を取られた時に一気に流れが相手に傾いた。

▼MF香川 個の差が最後に出た。受け入れ難い残酷な結果になったけど、これが勝負の世界。

▼MF原口 8強になれると信じていたけど、最後は圧力に耐え切れなかった。