森保監督に宿るドーハの教訓 格下相手でも気緩めず

ミャンマー戦前日会見で記者の質問に耳を傾ける森保監督(撮影・河野匠)

【ヤンゴン(ミャンマー)9日=浜本卓也、杉山理紗】日本(FIFAランキング33位)が10日に、22年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選初戦でミャンマー(同135位)とアウェーで戦う。

7大会連続のW杯出場を目指す戦いの幕が開く。森保一監督(51)は現役時代、終了間際にイラクに追いつかれW杯米国大会へ、初出場を逃した93年10月の「ドーハの悲劇」を経験。それ以来のW杯予選となる。W杯本大会のピッチに指揮官として立つべく、9日の公式会見では隙を見せることなく必勝を期した。

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高ぶっていた。日本と現地のメディアが所狭しと詰めかけた会見場。雨期のミャンマーで、蒸し暑さと相まって熱気が充満する中、森保監督も「夢に向かって戦いが始まるんだということで、1戦1戦試合に臨んでいこうと考えている」と熱かった。海外メディアから「ベスト布陣で来るのか」と聞かれると「今回の招集メンバーでキリンチャレンジ杯を戦ってきた。コンディションのいい選手を明日のスタメンに起用していきたい」。相手を甘く見ることなく、現状のベスト布陣で臨んだパラグアイ戦を踏襲する考えを示唆した。

苦い記憶がある。93年10月28日、カタール・ドーハ。勝てば初のW杯出場が決まる一戦に出場していた背番号17のボランチは、ロスタイムに相手のシュートがゆっくりとネットに吸い込まれる残酷な光景を目撃した。目の前で、W杯への扉が閉ざされた。教訓を忘れはしない。「我々にとって、あってほしくない結果が起こること、それもサッカー。どのチームと対戦しても難しい試合になると思うし、我々は常に最善の準備をして難しい戦いを覚悟して臨まなければいけない」と楽観論を排除した。現地メディアから「ミャンマー人が、日本は5-0以上の差で勝つと思っている」と水を向けられても「予想は自由です」と表情を緩めなかった。一瞬で地獄に突き落とされるのがアジア予選-。身をもって知る。

頼もしい選手がいる。現役時代、海外の強豪と対戦する前「この人たちすごいんだろうな」と気後れしたことがあったという。だが、今の選手たちは違う。日本代表史上最多の19人が海外組という布陣。「同じ目線から戦っていけるようになってきている」。就任から1年。相手不問で力を出しきる戦士を23人そろえた。「選手にはプレッシャーがかかる予選になると思いますけど、思い切って、幸せな気持ちをもって楽しんでもらえれば」。ドーハの悲劇から9448日。今度は監督として悲劇でなく歓喜へと日本を導く戦いの1歩を踏み出す。【浜本卓也】

◆ミャンマー代表 FIFAランキングは135位、W杯出場なし。日本との対戦成績は2勝5分け5敗。直近の試合は94年10月9日のアジア大会で、日本が5-0で勝った。アウェーでの対戦は1-1で引き分けた65年3月22日以来。ほとんどの選手が自国リーグで戦っているが、タイリーグでプレーする選手も数人いる。セルビア人のラドゥロビッチ監督は今年1月~2月のアジア杯でレバノン代表を率いていた。5日のW杯アジア2次予選初戦ではアウェーでモンゴルに0-1で敗れ黒星発進。同戦で攻撃の中心選手MFマウン・ルウィンが退場しており日本戦は出場できない。