森保監督「W杯の道は険しい」格下に初勝利も緩まず

日本対ミャンマー 勝利で選手たちと握手を交わす森保監督(中央右)(撮影・河野匠)

<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:日本2-0ミャンマー>◇F組◇10日◇ヤンゴン

サッカー日本代表(FIFAランク33位)は10日、敵地で22年W杯カタール大会アジア2次予選初戦のミャンマー戦(同135位)に臨み、2-0で勝利して白星スタートを切った。

激しい雨の降る厳しい状況の中、前半16分にMF中島翔哉(25)の先制点を皮切りに、同26分にはMF南野拓実(24)が追加点。後半36分にはMF久保建英(18)が日本代表のW杯予選年少出場記録を39年ぶりに更新する18歳98日でピッチに立った。次戦は10月10日にホームでモンゴル代表と対戦する。

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勝負への厳しさが、ミャンマーに番狂わせを許さなかった。難しいと言われるW杯の予選初戦。森保監督は、いつもと変わらぬ所作で90分間を戦い抜いた。普段と違ったのは、スーツでなくジャージーを身にまとっていたことだけ。中島の1点目直後は表情を緩めることなくメモ帳にペンを走らせ、前半41分の乱入者にも目もくれずDF吉田らに指示を飛ばした。指揮官としてW杯予選初勝利をつかみ「準備段階から簡単ではなかったけど、選手がまずは難しい初戦をきっちり勝って、無失点で勝ってくれて良かった」と評価した。

昨年のW杯ロシア大会ベスト16のチームを引き継いで1年。地元開催の東京五輪の代表も率いる。五輪の金メダルにW杯ベスト8と、背中には過度な期待がのしかかる。当然、体は1つしかない。五輪代表を直接指導できないジレンマがないはずはない。それでも言い訳は口にしない。「私が決断することは賛否両論、何をやってもあると思う。自信を持ってやっていくだけ」。一国の長として必要な度胸が腹の中にはある。

格下ミャンマー戦に海外組を史上最多の19人を呼んだことで聞こえた“異論”にも、動じなかった。現役時代にドーハの悲劇を味わった指揮官は、勝負の厳しさと怖さを誰よりも知る。雨期のスコールでぐちゃぐちゃなピッチに高温多湿の敵地には“まさか”を生む危険の芽がはらんでいた。

だからこそ、信念を貫いた。経験値だけに頼らず「現状のベスト」にこだわり、W杯予選初出場を先発に5人加えた。「不安材料は自分たち次第。理想通りにいかないことは覚悟している」。前半に2点を奪ったが、後半も交代カードを3枚使い切って追加点を奪う姿勢を見せた。慌てず、動じず、辛抱強く戦って手にした勝ち点3。ただ「追加点を取って完全にゲームを終わらせることもできた。アジア予選は難しい戦いになると今日あらためて感じた。次への課題」と引き締めることも忘れなかった。

2次予選の次戦は10月10日、ホームにモンゴルを迎える。「W杯への道は厳しく険しいけど、これまで通り1戦1戦ベストを尽くして最善の準備をして、戦っていく」。相手が格下でも森保スタイルは不変。歓喜の瞬間へ、力強い第1歩を踏み出した。【浜本卓也】