森保代表監督、五輪金へ「うまい選手より強い選手」

獅子舞を手に笑顔で写真に納まるサッカー日本代表森保監督(代表撮影)

<森保一監督新春インタビュー>

日本代表と東京オリンピック(五輪)世代のU-24日本代表と兼任する森保一監督(52)が、新春インタビューに応じた。21年の最大のイベントは、延期となった東京五輪だ。コロナ禍でサッカー界も例外なく影響を受けた。一方で劇的な成長を遂げる選手も出る世代。昨年の1年間で選手の成長や、序列の変化による生存競争の激化も生まれている。公言する金メダルを目指し、二足のわらじを履く指揮官は「うまい選手より強い選手」の出現を期待した。

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-昨年はコロナ禍で思うように活動できなかった

森保監督 普通に考えれば代表が海外で活動するのは難しいが、A代表は10月と11月で活動ができた。ありがたい。五輪チームは全体での活動はできていなかったが、A代表に五輪世代7人を招集した。オーバーエージのことを考えても、A代表の中に五輪世代を入れてプラスになる活動ができた。与えられた環境のなかで前進できている。金メダルという目標をつかめるよう準備を続けたい。

-2度の活動を通して感じたこと

森保監督 いろんな制限があるので、集中するには大変な部分がある。ただ、難しい状況の中でもストレスをためずに集中のスイッチを入れる、休めるという使い分けができることも一流のアスリートの条件。選手は2度の活動で、いいパフォーマンスを出すためのシミュレーションができた。

-コロナ禍での選手との接し方は

森保監督 これまでA代表や五輪チームに招集した選手には1度連絡し、現状を聞いたり、耐えながら頑張って欲しいと伝えた。まずは選手がクラブでプレーできることが大切。レベルアップし、個々の価値を上げてくれれば自然と戦力アップにつながる。

-国内は過密日程となったが、強さを見る基準になったか

森保監督 海外もそうだが、連戦でどれだけタフに戦えるのかということは期待して見ていた。代表は国際Aマッチ期間でも中3日か4日。大きな大会では6試合、7試合を戦わないといけない。選手がパフォーマンスを維持して戦えるか見ていた。

-コロナ禍で過ごし方は変化したか

森保監督 自宅待機の期間は、こんなに長い時間を家で過ごすことがなかったので、本を数冊読んだ。巨人の原辰徳監督の「原点」や、マージャンで20年間無敗の桜井章一さんの本など。原監督は団体スポーツでマネジメントする側として、うまい選手よりも強い選手を必要としているということを書かれていた。まさにそうだなという思いだった。

-五輪が延期となったことで心境の変化はあったか

森保監督 我々の競技については、各選手が1年間で大きな経験を積んだ。昨年よりさらに個やチームが力を持って臨めるということを楽しみにして欲しい。昨年できればもちろん良かったかもしれないが、すべてをポジティブに変換している。

-今年も2チームの活動が重なるが、強化方針は

森保監督 3月、6月と、活動は別になると思う。ただ3月の活動を終えた時点での状況を見ながら6月に向かう。A代表の中に五輪世代を融合させて活動することも踏まえ、プランをいくつか持つ。五輪でもW杯に向けても結果が出せるようにしたい。

-勝つために選手に求める資質は

森保監督 世界と戦うには特徴がないといけない。あとはどんな環境でもタフに戦えるか。コロナ禍の制限がある中でハイパフォーマンスを発揮するには、タフでないといけないとすごく感じた。うまい選手はたくさんいるけど、その中で強い選手が世界と戦えるのかなと思う。そういう基準で今後も見ていきたい。【岡崎悠利】

◆森保一(もりやす・はじめ)1968年(昭43)8月23日、掛川市生まれ。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入り。守備的MFとして京都、広島でもプレーし、03年に仙台で現役引退。J1通算293試合15得点。日本代表では国際Aマッチ通算35試合1得点。04年に指導者に転身。広島や新潟のコーチを経て12年から広島の監督を務め、3度のJ1制覇。17年10月に東京五輪代表監督に就任。18年4月から西野ジャパンでコーチを兼任。同年7月にA代表の監督に就任した。家族は夫人と3男。愛称「ポイチ」。174センチ。

【森保ジャパンの20年プレーバック】

1月に五輪世代のU-23アジア選手権(タイ)に出場。国内組中心のメンバーだったが、屈辱の1次リーグ敗退に終わった。その後、コロナ禍の影響で、A代表のW杯アジア2次予選、U-23代表が金メダルを目指した東京五輪も延期された。10、11月の欧州遠征で代表活動が再開。10月にカメルーン、コートジボワール、11月にパナマ、メキシコと対戦し、2勝1分け1敗に終わった。

※FIFAランクは対戦当時。日本は10月遠征時は28位、11月は27位。

<10月9日 VSカメルーン 0-0分け>

A代表としては20年最初の実戦で0-0と引き分けた。森保体制で最多得点の新背番号10のMF南野、FW大迫らが先発も、不発。足の長いカメルーンに球際の攻防で苦しんだ。296日ぶりの国際Aマッチということもあって連係不足は否めなかった。

<10月13日 VSコートジボワール 1-0勝利>

欧州のトップチームで活躍する実力者をそろえた強豪にDF陣は粘り強い守りで無失点に抑えた。攻撃陣は決定力に欠いたが、終了間際、セットプレーから途中出場のDF植田直通が豪快なヘッドで劇的な国際Aマッチ初得点を決め、1-0で勝ち、20年初勝利を挙げた。

<11月13日 VSパナマ 1-0勝利>

開始から押す展開も、得点が決まらない。もどかしい時間が続いたが、1トップで先発出場した、リバプールMF南野拓実が、後半16分、自らが倒されて獲得したPKを冷静に右足で決めた。森保体制となってからチーム最多得点を更新する12得点目。これが決勝点となり1-0で勝利。

<11月18日 VSメキシコ 0-2敗戦>

前半は攻め込んで主導権を握ったが、相変わらず決定力不足。後半開始からメキシコは中盤を1ボランチから2ボランチに変更。システム修正で流れをつかんだ相手に対応できないまま2失点を喫し敗れた。22年のW杯カタール大会をイメージした強豪国との対戦も課題を残した。

◆今年の日本代表 延期になっていたW杯アジア2次予選が3月から再開。同月、6月と、東京五輪世代のU-24日本代表も同時期に活動する。両代表を兼任する森保監督は、W杯カタール大会出場を確実にしながら、公言する五輪での金メダルを目指すことになる。MF久保建英(ビリャレアル)、MF堂安律(ビーレフェルト)、DF冨安健洋(ボローニャ)といったA代表常連の五輪世代をどう起用するかなど、二兎を追ってともに得るための手腕が問われる。