【藤田俊哉】堂安、三笘で新たな可能性を 守備は独に勝利ハンガリーにヒント/エクアドル戦展望

藤田俊哉氏

元日本代表MF藤田俊哉氏(50)がワールドカップ(W杯)代表発表前では最後の実戦となる27日のエクアドル戦を展望した。

23日の米国戦は、点を取るオプションを増やせたことが一番の収穫だった。予選を通して、伊東純也の右サイドからの突破がチャンスの中心。南野拓実が左から中央へ切り込むパターンもあったが、その回数は少なく得点には結びつかない現状が続いていた。

米国戦の後半、堂安と三笘が入り、2列目が右から堂安、鎌田、三笘の並びになってゲーム展開は大きく動いた。これまでと違うオプションが生まれたと感じさせるプレーが連続して生まれた。右MF堂安が前線でボールをキープしたり、中へ切れ込みシュートを狙うことで相手の守備を苦しめた。

利き足が左の堂安が右サイドでプレーする際に、左足でボールを持つことで右サイドへのパスが出しやすく展開がスムーズになる。タイミングの良いサイドチェンジのパスを送ることで、右サイドのドリブル突破を持ち味とした三笘も効果的なプレーを連発することができた。

このように右でゲームを作り、左サイドで勝負するプレースタイルは日本の大きな武器になる。特に硬直したゲーム展開を打開する際には大きなオプションといえる。フリースペースの三笘がボールを受け得意のドリブル突破で勝負できる回数が増えれば確実に得点数も増えるだろう。

このようなパターンはこれまで日本代表であまり見られなかった展開だ。しかも相手が疲れてきた時間帯となれば得点の可能性はさらに高まる。鎌田がリーグ戦の好調を持続させていることもあって、この堂安、三笘との連携がさらに生きた。W杯本番に向けての明るい材料である。当然、徹底的に研究されるはずだが、それを上回る連係の精度でW杯に臨んでほしい。

今度のエクアドル戦は、好調を維持する堂安、三笘をスタメン起用し、伊東、久保、南野ら能力の高い2列目の選手を途中から投入するプランを試してもいい。新たな可能性が生まれ、日本の得点力不足が改善されたら本大会への大きな自信につながる。

さらにこれまで日本を引っ張ってきた実績を持つ南野が奮起してシャープなプレーで得点してくれるなら、チーム内の競争はますます激化する。自然と攻撃陣の新たな競争が生まれ、今よりハイレベルの争いが始まり、楽しみが増える。

欧州ネーションズリーグで、ハンガリーがドイツに1-0で勝った。これは大きなヒントになる。ハンガリーはDFライン5枚、MFライン4枚の2列のブロックを作って、ドイツの攻撃を封じた。守備に人数をかけるだけでなく、積極的にボールにアプローチして、奪ってからは迫力ある攻撃を仕掛けた。

この気迫とメリハリが、ドイツ攻撃の芽を摘み、セットプレーの得点につなげた。強敵相手の必勝パターンの1つを実践した。日本がW杯の初戦となるドイツ戦で、ハンガリーのような極端な守備陣形にするかは、森保監督の選択だが「オレのゾーンは絶対通すまい」というハンガリー選手のような気迫を1人1人が持つことが大切。この守備における気迫が米国戦に臨んだ日本代表でも見られたことで2-0での勝利となり今後に弾みをつけた。

日本代表の強みである守備の連係に、新たな攻撃陣の組み合わせを加え、仮想コスタリカ、スペイン戦になる次のエクアドル戦に臨んでほしい。さらなる飛躍を信じている。(元日本代表MF)

◆藤田俊哉◆(ふじた・としや)1971年(昭46)10月4日、静岡市生まれ。清水商高、筑波大から95年に磐田入団。01年にはJリーグMVP。12年引退。オランダVVVのコーチやリーズのフロントスタッフ、18年から日本サッカー協会の欧州駐在強化部員として日本人選手のサポート、欧州クラブとの橋渡し役も務めた。今月、黄金期を築いた古巣の磐田の強化責任者にあたるスポーツダイレクターに就任。元日本代表。