アジアカップ(アジア杯)で、もう1つの“日本代表”が快挙を遂げた。
1月13日に行われた1次リーグのオーストラリア-インド戦で日本の山下良美審判員(37)が、この大会で女性主審として初めて試合を裁いた。
坊薗真琴審判員と手代木直美審判員も、それぞれ副審を担当。第4の審判員を荒木友輔、リザーブ副審を三原純、VARを木村博之、アシスタントVARを飯田淳平の各審判員が務め、総勢7人の日本人が携わった。このほど、山下氏が取材に応じ、歴史的な偉業を振り返りつつ、女性審判員の先駆者として活動する「本音」を明かした。
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数々の「女性初」を達成してきた審判員でも、アジア杯の舞台は独特の緊張感があった。山下氏は、入場シーンでこんなハプニングがあったことを明かした。
「ボールを普通に持って入って、真ん中に置いて、左のポケットから笛を取るんですけど、その時にイエローカードを出しちゃって…。『あ、私、緊張しているな』と思って(笑い)」
初めてのことだった。危うく、試合前に警告を出してしまう危機を回避し、気を引き締め直したという。
大会2試合目。判定基準も含めて注目される中、90分を通して安定感あふれるレフェリングを披露。称賛を浴びた。「両チーム、選手ともプレーに集中してましたし、すごくお互いのチーム同士にも、審判員に対しても、リスペクトがあふれる試合でした。みんなでポジティブに声をかけ合いながら、できました」。抜群のチームワークだった。
女性審判員のパイオニアとして、道を切り開いてきた。22年にJ1で主審、男子W杯で第4の審判。23年は女子W杯の開幕戦を任された。控えめな性格だが、自身の存在が少しでも発展につながれば、との思いに突き動かされて笛を吹く。
「プレッシャーは、本当に大きく感じているんですけど、そのプレッシャーを持てる立場にいられるということ自体が、すごく光栄で、すごくうれしいこと」
この職が、当たり前になることが目標だ。メディアから取り上げられることについて「周りの人に支えられているのは本当に感じます。『いやいや、そんなじゃないです』が正直なところ」と、注目度に対する本音を吐露する。それでもネガティブな感情を押し殺し「とにかく自信を持って、ただただ、できることをやろう」と誇りを優先する。
17日のカタール-タジキスタン戦では第4の審判を担当した。ベンチで激怒するタジキスタン監督に毅然(きぜん)とした態度で接し、再び脚光を浴びた。
「こういう立場になってみて、やはり、この機会は絶対に継続させていきたいと再確認して。その思いはすごく強く持っています」
中学生のころは「欲がなさ過ぎる」と怒られたほど無欲な気質だったが、今や堂々たる立ち振る舞い。国内、アジア、世界の全大会を経験した第一人者として最前線を走り続けている。