サッカーの次期日本代表監督に、元アルゼンチン代表監督のホセ・ペケルマン氏(60)の就任が決定的になった。30日にも発表される。日本協会はW杯南アフリカ大会終了直後から、原博実強化担当技術委員長(51)が岡田武史監督(54)の後任の人選を進めていたが、交渉が不慣れなことから大幅に遅れていた。新生日本代表のスタートとなる9月4日のパラグアイ戦(日産ス)、同7日のグアテマラ戦(長居)は原委員長が代行監督を務めるが、ペケルマン氏は同2日の代表招集に合わせて来日する予定。ようやく新生日本の顔が決まったことになる。

 遅れに遅れていた新生日本代表の指揮官として、名将ペケルマン氏の就任が決定的となった。原委員長はこの日、個人名は避けながら「彼も日本に来たい、やりたいと思っているし、こっちもやってもらいたいと思っている。日本をリスペクトしているし、勉強熱心な方」とし、正式決定間近を認めた。

 現状ではサインはしていないが、大筋で合意しており、30日にも協会がペケルマン監督就任を発表する見通し。既に両者で弁護士、税理士を交え細部を詰めており、ここから破談となる可能性は極めて小さい。W杯招致活動のため渡欧した小倉会長も「皆さんに喜んでもらえるような人。お互いに弁護士を立てて交渉しているのは1人。日本を理解していて、私も知っている人」と、ようやく決まった後任監督にいつになく冗舌だった。

 原委員長は去年の秋から情報収集を進めていた。その中で、02年W杯日韓大会でアルゼンチン代表チームを統括する立場で来日し、06年ドイツ大会では同代表監督としてチームを8強に導いたペケルマン氏への評価は最上級だった。「ああいう人に監督をやってもらいたい」。5月末、W杯南アフリカ大会を直前に、原委員長はペケルマン氏の温和な人間性、指導力を別格視していた。

 5月に身辺調査をはじめ、6月のW杯本大会中にペケルマン氏と接触を持った。世界的指導者のペケルマン氏には、オーストラリア、アルジェリア、コートジボワール、ペルー、エクアドルなど強豪国が続々と代表監督のオファーを出し、その中で日本の存在感は薄れていた。

 一方、原委員長は元レアル監督ペジェグリニ氏、現オリンピアコスのバルベルデ監督らをリストアップ。7月下旬に南米を訪れた際、再度ペケルマン氏とも接触し、日本居住への好感触を得ていた。交渉のタイミングを考慮して、ペジェグリニ氏らを優先していたが、常にペケルマン氏とは連絡を保ち、良好な関係を維持していた。

 原委員長の手際の悪さで、ペジェグリニ氏らとの交渉が決裂した直後の8月20日ごろ、再び日本協会側がペケルマン氏へ日本代表監督就任を打診。その後、ほぼ連日の交渉を続け、27日には、ペケルマンサイドが「実は日本協会とコンタクトを持っている。監督になってもらいたいと言われており交渉中。今日、明日中に話し合い、その結果で状況が変わる」と、合意への流れを認めていた。またマティルデ夫人も「日本でもどこでも、夫が決めたところにはどこにでもついて行く」と、習慣の異なる日本での生活にも不安はない。

 W杯南アフリカ大会でベスト16に入り、国民的な関心を集めた日本サッカーは、協会の不手際で長く代表監督不在という異常事態を、名将ペケルマン誕生でようやく解消できる。名将を得たメリットが、今回の混乱のデメリットを補えるか。すべては育成のスペシャリストの双肩にかかる。