磐田が1-0でJ2清水に競り勝ち、「静岡ダービー」を制した。0-0で迎えた後半44分、U-18(18歳以下)日本代表のFW小川航基(18)が、左サイドからクロスを右足で押し込み、試合を決めた。名波浩監督(43)が「サッカー偏差値が高い」と評価する大型新人が早速、結果を残した。磐田は同杯2連勝。最終戦は10日に行われ、磐田はJ3鹿児島と対戦する。

 待ちに待った瞬間が訪れた。後半44分、小川航が、左からのクロスに反応した。「止まって受けようか迷ったけれど、ニアサイドが空いていた」。指をさしてボールを要求すると、右足ダイレクトで決めた。プロ初ゴールが、「静岡ダービー」での決勝弾に。チームメートから祝福されると、満面の笑みを見せた。

 入団後から「壁」にぶつかっていた。U-18日本代表ではエースとして活躍し、昨年度の全国選手権は2戦4得点。名波監督から「人も使えて状況判断に優れている。サッカー偏差値が高い」と評価された高校NO・1ストライカーだが、磐田の対外試合では存在感を示せずにいた。高校レベルとは違うプロのスピード、フィジカルに戸惑っていたからだ。「高校と違って、プロは練習量も少ないので不安がありました」。

 この日も午前中に行われた清水との練習試合に45分間出場。開始10分以上ボールに触れず、名波監督から「そんなサッカー選手はいないぞ」と叱咤(しった)されていた。キックオフ前には、今季公式戦では実現しない「静岡ダービー」を強く意識する指揮官が、「絶対に勝て」と指示。「自分が絶対に決める」と燃えていた。ベンチに控え、後半36分から出場。最初のプレーでハイプレスをかけた。清水DFヤコビッチ(30)と競り合い、あわやPK獲得のプレー。これで不安がなくなった。

 試合後は「正直ホッとしました」と安堵(あんど)の表情を見せたが、満足はしていない。かつて、磐田を支えた元日本代表FW高原直泰、前田遼一でも成し遂げられなかった「高卒ルーキー開幕スタメン」を目指している。「そこが目標。人とは違うアピールをもっとしていきたい」。

 クラブ側からの期待値も高く前田が背負ったエースナンバー「18番」を継承。リオデジャネイロ五輪も飛び級での選出も狙っている。「そこを目指さないのはもったいない。結果を出して、名を残せるような選手になりたいです」。次代の日本代表を担う逸材としても期待される「超新星」が確かな1歩を踏み出した。【神谷亮磨】

 ◆小川航基(おがわ・こうき)1997年(平9)8月8日、横浜市生まれ。大豆戸FCジュニアユースから桐光学園に進み、1年時から主力。U-18日本代表では背番号「9」で、昨年6月のパンダ杯(中国)では3戦5得点で優勝に貢献。昨年度の全国高校選手権では2試合4得点。180センチ、70キロ。