Jリーグは最終節にドラマが起きる。2ステージ(S)制に移行した昨季、東京とG大阪のチャンピオンシップ出場切符(年間3位)争いは最終節までもつれ、G大阪が逆転でCS切符を手にした。毎年、上位争い、残留・降格争いなどの明暗を図らずも生み出しているのが、Jの各カテゴリーの全試合日程を決めるコンピューターソフトの試合日程自動作成システムだ。Jの関係者からは通称「日程くん」と言われ、陰のドラマ演出家となっている。日程くんの秘密に迫った。

 毎年、最終節までもつれる優勝と残留争いの行方。ドラマが生まれる要因の1つとなっている「日程」を作成しているのは、人ではない。「日程くん」と呼ばれるソフトだ。Jリーグでは担当者が前年12月までに各クラブからホームスタジアムの使用不可能日を調査した上で翌年1月にそのシーズンの日程、対戦カード、会場を決定する。03年まで手作業だったが、クラブ数の増加で04年から「日程くん」を使用。J3が始まった14年からは進化した「新・日程くん」がその役割を担っている。

 担当者はあらかじめ、日程くんには競技や興行上の公平性を守る条件、ACL出場チームや降雪地の日程面の調整などを入力する。具体的には(1)3試合以上のホーム、アウェー連続回避(2)第1S第1節にホームで始まるチームは第2S最終節はアウェー。アウェーならホーム(3)平日開催の均等化(4)開幕戦から第5節まで少なくとも2試合はホーム(5)中2日の試合数の均等化(6)夏休み、GWなど繁忙期のホームの均等化などだ。

 新日程くんはJ1全306試合を3~5分、J2全462試合を1時間で算出する。旧日程くんがJ1で1時間、J2で24時間かかったというから、格段の進化だ。条件が厳しいと「矛盾あり」となり、回答が得られない場合があるが、スタッフが矛盾条件の緩和措置を取りながら操作して解決に導く。

 伝統クラブの直接対決をリーグ終盤に多くするなど、人為的なドラマ演出を疑いたくもなるが、Jリーグ担当者は「忠実に、競技や環境の公平性を追求した結果」と説明する。今季は第2S第13節と同14節がACL出場チームによる直接対決になる。時期的に年間1位争いのカギになりそうだが、担当者は「ACL出場チームが、翌年に上位にくるかはだれも分からない。毎年のドラマは偶然としか言いようがない」。あくまでも、公平追求を最優先した結果つくられた日程がドラマを生む。

 今季の最後5試合で目立つのは昨季15位と苦戦した新潟のカード。対戦相手が(13)鹿島(14)磐田(15)浦和(16)G大阪(17)広島と昨季の上位チームが並ぶ。日程くんが、新潟をメークドラマのカギに指名したのか? 今季のドラマの結末はいかに。【岩田千代巳】

 ◆新・日程くん 日程作成は天皇杯決勝後の5日間程度で行われる。J3が始まった14年から新日鉄住金ソリューションズがITパートナーに。従来の日程くんより、処理が速くなったほか、回答が得られない矛盾条件がどこなのかも的確に指摘するため、より公平な日程を出すことができるようになった。「日程くん」の呼び名の由来に、Jリーグ関係者は「日程の担当者にとっては人工頭脳の相棒。初代の担当者が擬人化して呼んだ名前が広がったようです」と説明した。