大分トリニータがJリーグ史上初となるJ3降格からのJ1復帰を果たした。ナビスコ(現ルヴァン)杯優勝もある伝統クラブからどん底に転落して3年。選手、ユースコーチなどで大分に所属した片野坂知宏監督(47)が、16年の就任から3年で古巣をよみがえらせた。歓喜の6季ぶりJ1復帰だ。

この日のモンテディオ山形戦では、MF星が先制点を奪うなどどこからでも点を奪える“忍者攻撃”でJ2最多76点目。勝てば優勝だったが、後半ロスタイム1分に同点とされ、得失点差で横浜FCを上回る2位を死守した。

J3時を知るDF鈴木は「うれし泣きしました」と感無量。MF松本も「うれしい。涙が止まらず恥ずかしいぐらい泣いた」。指揮官も「勝って優勝を決めたかったが結果が得られてうれしい」と喜んだ。

片野坂監督はG大阪にコーチで残る選択肢もあったが、古巣大分の監督就任オファーを悩んだ末に受諾。当時は最大11億円という債務超過の影響などでJ3の選手年俸は、予算約14億円だった13年J1時の約3分の1。チーム編成も困難な状況だったが、指揮官は「恩を返すため挑戦しようと思った」と飛び込んだ。

G大阪や広島時代、自身がコーチとして師事した西野朗、長谷川健太、森保一、ペトロビッチという名将から学んだ。片野坂監督は「いいとこ取りで、守りが堅いJ2で取捨選択できた」という。来季は予算約11億円の予定で、リーグ最下位クラスの選手年俸では大型補強はできない。だが育成も含め3年の蓄積をさらに向上させ勝負する。【菊川光一】