清水エスパルスは1-0でセレッソ大阪を破り、2連勝を飾った。後半37分にFW北川航也(22)が左足で決勝点。自陣からの高速カウンターから奪ったエースの公式戦4試合連続ゴールを守りきり、今季初の完封勝利を収めた。

待ちわびた瞬間だった。清水は今季初の完封でホーム初勝利。試合後の「勝ちロコ」でアイスタのボルテージは最高潮に達した。ヤン・ヨンソン監督(58)は「ファンも求めていた勝利だと思う」。声援に感謝した指揮官も安堵(あんど)の表情を見せた。

一瞬の隙を見逃さなかった。後半37分、自陣でのセットプレーからGK六反勇治(32)がキャッチング。その瞬間が「スイッチ」だった。「走っているのは見えていた」と六反。敵陣に猛ダッシュしていたDFエウシーニョ(29)へ正確なキックを送ると、ボールを受けた助っ人は右足でゴールを狙った。

無人のゴールに転々とするボールはやや左に外れていた。歓声が一瞬、ため息に変わったが、北川だけはあきらめていなかった。「あの位置まで走っていたことが全て」。ボールを追って走り込んだエースはラインを割る直前で左足を伸ばすと、ボールはゴール右隅へ。思いを込めて放ったシュートはポストに当たってゆっくりと吸い込まれた。六反のキャッチから、14秒。2本のパスでネットを揺らす衝撃の高速カウンターで勝負を決めた。

北川は「負けられない試合だった」。15日の練習試合でMF石毛秀樹(24)が右ひざを負傷。全治8カ月の重傷を負った。北川にとって石毛は尊敬するユースの先輩。ゴール後はベンチに掲げていた「背番号8」のユニホームをスタンドに向けた。選手全員が試合前後に着た石毛の写真入りTシャツも、北川とMF竹内涼主将(28)の発案。長期離脱を強いられた戦友を勇気づける1勝となった。

指揮官が「石毛に勝利を届けたいと思っていた」と話せば、北川も「いろんな人の思いを背負って戦っていることを再認識できた」とうなずいた。開幕6戦未勝利から2連勝。仲間を思い、結束したチームが巻き返しへの確かな手応えをつかんだ。【神谷亮磨】