93年のJリーグ発足後、初の大学チーム8強を目指した法大が、延長の末、J2ヴァンフォーレ甲府に惜敗した。120分戦い、ベスト8の道が絶たれる試合終了の笛とともに、ピッチの選手たちは崩れ落ちた。

2失点とも一瞬の隙を突かれた。前半27分、甲府のベテランDF山本英臣(39)のロングボールからカウンターを浴び、同点で迎えた延長前半3分、再び山本に、セットプレーで虚を突く速いリスタートを仕掛けられ失点した。

若手主体の甲府相手に、ボールを保持し攻め続け、シュート数も相手を上回ったが、勝利に届かなかった。長山一也監督(37)は「やっていることは悪くはなかったけど、結果が伴わないと評価されない。本当の評価は勝つこと。そこがつかみきれなかったので悔しい」と率直な気持ちを口にした。

大学サッカーから、Jリーグ選手を数多く輩出しているが、大学のサッカーリーグは注目を浴びず、客席も空席が目立つ。内閣総理大臣杯で準優勝したが、報道陣の数は少なかった。だが、法大が2回戦で東京ヴェルディ、3回戦でガンバ大阪を撃破した際、メディアが大きく取り上げた。長山監督は現在の大学サッカーの現状を踏まえ、天皇杯で勝つことの意義をこう説いた。「天皇杯に勝つとメディアが取り上げてくれる。天皇杯は全国に名前を広げる大事な大会。大学サッカーに携わる目線からすると勝負どころで、今の現状を変えたいのがあって。変えるためには勝ち続けて大学サッカーは強いという話題性をつくるのが早い。そこをつかみたかった。もう1つつかめば、違う状況になっていた」。大学サッカーを世に伝えるためにも、ベスト8にたどり着きたかった。

来季からFC東京へ加入が内定しているMF紺野和也(4年)は、試合後、大きな目標を失ったショックを口にした。「今までサッカーをやってきて一番悔しい。大学生がプロと試合できるのは天皇杯しかないので。個人的に、今年一番、かけていた大会だった」。プレーでは魅せた。甲府の守備陣に囲まれながらもスピードに乗ったドリブルで果敢に仕掛け、ゴールを脅かした。仕掛ける度にスタンドからもどよめきがおこった。「来年、J1でやるので通用して当たり前とおもってやっていた。あれぐらいはやれないといけない」と淡々と話し「勝ったら新しい歴史を立てられたんですけど、大学サッカーにとって、ベスト16はとても大きな壁だったんだなとあらためて感じた」と振り返った。今後もリーグ戦、インカレと大学の大会は続く。今年の天皇杯は、昨年のインカレで優勝しアマチュアシードとして出場権を獲得した。それだけに、紺野は「まだ、悔しくて切り替えられないけど、少し休んで。インカレで優勝して、後輩に置きみやげをしたい」と必死に前を向いた。【岩田千代巳】