“カズイズム”で13年ぶりのJ1昇格をつかみ取る。横浜FCのFWカズ(三浦知良、52)が22日、横浜市内で24日の愛媛戦に向け調整した。勝てばJ1復帰が決まる大一番。カズは93年の「ドーハの悲劇」を教訓に、チームに「終わるまで昇格を口にしない」と目の前の一戦への集中を促してきた。プロ34年目の大ベテランの訓示とともに、念願のJ1昇格へ突き進む。

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あと1勝で、J1-。そんな大勝負を前にもカズは冷静だった。若手選手が多い中で「誰ひとり、昇格と浮かれたような話をしている選手はいない」。続けて「愛媛戦に勝つことだけに集中している。非常にいい状態にあると思いますね」と、チームの状態に自信を口にした。

3位大宮に勝ち点差2をつけての2位。得失点差でも大宮を上回る有利な状況で、どうしても「J1」が目の前にちらつく。だが、プロ34年目で酸いも甘いも経験しているカズは「まだ何もつかみ取っていない。終わるまで、昇格の話をするな」と先頭に立ってチームを引き締めてきた。根底には「日本代表W杯初出場」という大きな悲願を、最後の最後で逃した93年のドーハの悲劇がある。

カズは振り返る。「ドーハの時は、前半終わってリードして控室に戻った時に、ちょっとソワソワしたものがあったかな。そんなつもりはなかったけど、W杯というものを軽く言ってしまったというのもある。本当にどうなるか分からない」。重い経験をしてきたからこそ、手にする前は、J1昇格の未来を口にすることを封印している。「昇格を果たした時に、J1という言葉を口にしたい。できるだけ普段と一緒のようにすること」。説得力のある大ベテランの言葉は、しっかりとチームに響いている。

昨季は得失点差に泣き3位で終わり、J1自動昇格はかなわなかった。J1参入プレーオフでは、試合終了間際の失点で目標を絶たれた。だが、今季は自力で昇格を達成できる状況にある。カズは「去年よりもっと近いところまで来た。逃してはいけない。自分たちの力で乗り越えてものにしたい」とキッパリ。“カズイズム”を受けたチームが、カズとともにJ1へ向かう。【岩田千代巳】