神戸が令和初代王者に輝き、クラブ誕生25年目で悲願の初タイトルを手にした。FW藤本憲明(30)が全2得点に絡むなど2-0で、常勝軍団鹿島に完勝。MFアンドレス・イニエスタ(35)を中心にFWダビド・ビジャ(38)の現役最後の花道を飾った。この初優勝で待望のACLと、J1王者横浜と対戦する富士ゼロックス・スーパー杯(2月8日、埼玉)のいずれも初出場が決定。新国立でのスポーツ初の公式戦で新たな時代の扉を開いた。

   ◇   ◇   ◇

神戸が時代を動かした。通算20冠の鹿島に対して無冠の男たちが挑み、新装国立で初タイトルを獲得。天皇杯を掲げた主将のイニエスタは「個人とクラブとしても、とても特別な日になった。こういう形でビジャを送り出せて最高」と喜んだ。バルセロナで32冠を獲得した英雄でさえ、神戸の悲願の日本一と盟友の花道を飾れたことを喜んだ。

決勝戦が現役最後になるビジャは、残り約2分だけプレーした。実は昨年12月7日のJ1最終節磐田戦で、箇所こそ明かさなかったが全治4週間の大けがをしていたという。延長戦のある天皇杯、しかも1点差での投入はリスクがあった。だが仲間は2点差をつけ、手負いのビジャをピッチに迎え入れた。

ビジャは「この試合にまで大変な時間を過ごした。ぎりぎりで間に合った。これ以上ない現役の終わり方だ」と感謝した。昨年6月に就任したドイツ人のフィンク監督も「神戸のすべての人が喜んでくれている」と話した。VIPの同時プレーは実現しなかったが、FWポドルスキとイニエスタは先発。MFサンペールが外国人枠でベンチを外れたが、ポドルスキは「誰が出ても自分たちのサッカーができるようになった」。

神戸がクラブとして産声を上げた95年、始動日の1月17日に阪神・淡路大震災が起きた。メインスポンサーのダイエーが撤退。神戸市が中心のクラブ運営に移行も、03年には事実上の経営破綻。現在の三木谷会長が経営に乗り出し、18年度の営業収益がJリーグ史上最高の96億円超のビッグクラブへと成長させた。生え抜きの日本選手を多く育成する課題はあるが、有言実行で結果を出した。

三木谷会長は「単純に強いだけではない、観客を魅了するフットボールを目指して信念を貫いてきた。次はアジア王者」とACL制覇を掲げる。「一致団結」のスローガンの通り、20年シーズンもイニエスタを中心にした神戸が進化していく。【横田和幸】

○…神戸は試合後、都内のホテルに移動してビールかけで祝勝会を開いた。三木谷会長が音頭をとり、引退するDF那須らベンチ外の選手やスタッフも加わり、2000本のビールが一気になくなった。2日には神戸で優勝報告会を開く。