仙台渡辺監督 原口元気からの金言受けベガルタ改革

 仙台渡辺晋監督(43)が改革に着手する。昨年12月、日本代表MF香川真司(27)所属のドルトムント、同代表FW原口元気(25)所属のヘルタ、DF内田篤人(28)所属のシャルケ、同監督が憧れるボルシアMGなど、ドイツとイングランドのクラブの練習や試合を視察。18日間の視察で、練習の密度や選手の考え方など、日本との差を痛感した。そこで得た知見をもとに、昨季年間順位12位からの逆襲を狙う。新生ベガルタは今日12日、始動する。

 海外視察をへて渡辺監督は、今季仙台の練習、試合風景を変える。「まずアップのところから変える」と言い切った。原口が所属する独1部ヘルタは、気温2度の中、約70分間の練習を行っていた。アップは仙台と同じ20分。そこからが違った。仙台ではポゼッション練習を行うが、ヘルタではいきなり2対2の対人練習が始まった。

 渡辺監督 同じ70分(の練習を)やって、20分後に100%でやれるのか。(仙台では)30分後にバーン。同じ70分でも50分と40分の差が出る。その差は大きい。

 ただ、練習の密度を濃くしたらケガにつながりかねない。昨季、仙台では負傷者が相次いだだけに、渡辺監督は心配だった。しかし原口に「それでケガしたらアップ不足でしょ。自分が」と言われ、はっとした。選手たちが事前に準備していれば、解決すること。選手たちから反発が起きるかもしれない。その返答はもう決めた。「自分でジムで準備してほしい」。選手に自立と責任を求めることにした。

 練習以外の部分でも同じだ。ヘルタでは原口ら選手約20人が、ゴールポストを片付けていた。仙台では練習後に主にコーチが担う。渡辺監督は原口に尋ねた。「あれをやらないと怒られるのか」。原口は「そういう雰囲気がある」。ほかのクラブでも、シュート練習で選手が外したボールを選手自らにとりに行かせるなど、日本ではスタッフがやっていることの一部を選手に任せていた。渡辺監督は「選手に(いい環境を)与えすぎないこと」と、真剣なまなざしで語った。

 試合風景も変わる。日本では、フィジカルコーチが試合中、アップ中の控え選手の近くにいて、盛り上げる。シャルケの試合に、フィジカルコーチはいなかった。原口は「それは当たり前。パフォーマンスが悪かったら、自分の責任ですから」と答えた。

 海外ではアップを選手に任せて、その様子で途中出場を判断する。日本では、フィジカルコーチが盛り上げても出場しなかった選手から、不満の声も上がる。なら、もう置かない。「結局、逃げ道をつくってしまう。責任も持たせたい。俺も信じてあげたい」。代わりにGKコーチをベンチ入りさせる考えを示した。

 原口や香川、内田が口をそろえて言った言葉が、背中を押してくれた。「最後は気持ちの問題」。指示されて動くのではなく、選手が自ら率先して動くことが重要なのだ。渡辺監督はこれまでを振り返り、「環境を与えることで、選手に言い訳の機会をつくりたくなかった。あえて、そういう状況をつくっていた」と反省した。浮上のヒントを得た渡辺ベガルタは、今日12日に動きだす。【秋吉裕介】