浦和阿部にリーチが世界の主将論「言い分全部聞け」

浦和阿部主将(左)とラグビーW杯イングランド大会で日本代表主将の東芝リーチ(撮影・岡崎悠利)

 浦和のMF阿部勇樹主将(35)が、ラグビーの15年W杯イングランド大会の日本代表主将リーチ・マイケル(28=東芝)から金言を授かった。9日、都内の東芝のグラウンドを訪問して初対面。練習後には焼き肉店に場所を移して約2時間半、“主将論”に花を咲かせた。3勝を挙げて世界を驚かせた闘将から、あと1歩で逃し続けた年間王座獲得へのヒントを得て、今日14日、さいたま市内で始動する。

 東芝のグラウンドに足を運んだ阿部は驚いた。「想像以上に大きい」「デカイのに速いし、ステップも細かい」。日が傾いた練習場で西日を気にすることなく、初めて間近で見るリーチの動きを見つめていた。

 練習後、リーチがグラウンドそばの焼き肉店に阿部を誘った。偶然にも、阿部もなじみの店だった。「壁にリーチさんのサインを見つけて『おーっ』となったことがあって。『会ってみたい』と話していたら、帰り道にリーチさんがいたことがあった。話しかけたんですが…」。覚えのないリーチは「本当ですか? すみません」と苦笑い。肉を焼くしちりんから上がる煙をはさんで、会話が進んだ。

 ラグビー日本代表は15年秋のW杯に向けて約半年間、宮崎で異例の長期合宿を行った。毎朝6時から1日3部練習など、ジョーンズ前ヘッドコーチの過酷な訓練が続いた。リーチが「外出は基本的にサンダルは禁止。ホテルに戻った時間を警備員に確認されることもあった」と懐かしむと、阿部は「僕たちも、まだまだ甘いな」と笑った。

 そんな和やかな雰囲気が徐々に熱を帯びていく。

 浦和は昨季、チャンピオンシップで2年連続で敗れて年間王者を逃した。短期決戦が弱点というイメージを拭えなかった。主将の阿部には、さまざまな国籍の選手が集まった日本代表を束ねた闘将に聞いておきたいことがあった。

 阿部 どうやってチームをまとめたの?

 リーチは箸を止めた。短く言葉を切りながら、手ぶりを交えて答えていく。

 リーチ まずはいろいろ、選手の言うことを全部聞いてみる。重要なのは、Want(やりたいこと)と、Need(やるべきこと)。1人1人の考えをしっかりと整理する。(チームや個人にとって)必要なことを優先する。やりたいこともできる限り、実現できるようにしたい。

 相手のすべてを受け入れてから、解決策を考える。そうして考え方や文化が異なる選手をまとめたという。同じような言葉を繰り返して説明を尽くすリーチに阿部は何度もうなずいた。浦和には今季、ブラジル人を含めて7人が加入する。短期決戦で成果を出したリーチの意見は貴重だった。

 背中で引っ張るタイプの2人は、同じ赤き名門を引っ張る立場で深く共感した。約2時間半、話は尽きなかった。最後は固く握手を交わし「また」と言って別れた。浦和は今日14日に始動する。阿部は“リーチ流”を力に変え、巻き返しに挑む。【岡崎悠利】

 ◆阿部勇樹(あべ・ゆうき)1981年(昭56)9月6日、千葉県生まれ。市原(現千葉)ユース時代の98年にJデビュー。千葉で05、06年にナビスコ杯連覇。浦和に加入した07年はACL優勝。10年にイングランドのレスターへ移籍し、12年に復帰。日本代表の国際Aマッチは10年W杯南アフリカ大会など53試合で3得点。178センチ、77キロ。

 ◆リーチ・マイケル 1988年10月7日、ニュージーランド・クライストチャーチ生まれ。来日し北海道・札幌山の手高に入学。東海大-東芝。13年に日本国籍取得。日本代表キャップ47。家族は日本人の妻と娘。2月からはスーパーラグビーのチーフス(ニュージーランド)で3季目のプレー。189センチ、105キロ。