ラスパルマス大詰め鹿島柴崎、30日にもデビュー戦

16年12月、Rマドリード対鹿島の前半、左足でゴールを決める柴崎岳

 鹿島MF柴崎岳(24)のスペイン1部ラスパルマス移籍が22日、決定的となった。今冬の欧州移籍を希望し、鹿島側も容認。近日中にラスパルマスから正式オファーが届き、今週中にも合意する見通しとなった。チームはこの日午前にタイ遠征へ出発したが、渡欧に備えるため柴崎は同行せず、茨城・鹿嶋市内で1人だけで練習を行った。

 15年から欧州移籍を本格的に目指してきた柴崎が、ついに海外でのプレーを実現させる。移籍先が未決定なら、24日にタイで開幕するクラブ対抗戦「Jリーグ アジアチャレンジ」に鹿島の一員として出場する予定だったが、急きょ辞退。クラブ関係者は「正式にオファーが来るという前提で準備している。移籍の可能性が(本格的に)あるということ」と説明。近日中に獲得オファーが届き、正式契約を結ぶ可能性が高まったと明かした。

 前日21日夜、柴崎はクラブ幹部に「移籍を視野に入れた行動を取らせてほしい」と日本で吉報を待つことを要望した。15年にはドイツ1部フランクフルトなどが興味を示すも、オファーには至らなかった。「鹿島でJリーグのタイトルを取って行きたい」と親しい関係者に決意を語っていた昨季、自身初のJ王者に加えて天皇杯との2冠達成。クラブW杯決勝Rマドリード(スペイン)戦では2得点を挙げるなど世界に「SHIBASAKI」の名をとどろかせた。先にあったスペイン2部に続き、新たなオファーも引き寄せた。

 いつでもスペインに渡る準備は整えている。この日、誰もいない鹿島のクラブハウスに柴崎の姿があった。背番号と同じ10個のボールを自分で運び、1人だけでシュート練習。そして自分で拾い、また打ちまくる。ドリブルやフェイントも入れながら、黙々とネットを揺らす姿は、サッカー少年が夢を抱いてボールを追う、それだった。練習後、携帯電話を片手に車に乗り込むと家路を急いだ。

 柴崎は今週中にも日本を離れ、メディカルチェックなどを経て正式契約に至れば、早ければ30日(日本時間31日)のバレンシア戦(ホーム)でデビューする可能性もある。スペイン1部挑戦は00年城彰二(バリャドリード)から数えて10人目。大久保嘉人(マジョルカ)や中村俊輔(エスパニョール)らもレギュラーに定着できなかった鬼門の舞台。レアルを脅かした男が、再び世界を驚かせる。【鎌田直秀】

 ◆柴崎岳(しばさき・がく)1992年(平4)5月28日、青森県野辺地町生まれ。野辺地小2年から野辺地スポーツ少年団でサッカーを始め、青森山田中3年時に全国中学大会準優勝。青森山田高では1年からレギュラーで2年時に全国高校選手権で準優勝。日本代表は14年9月のベネズエラ戦で初出場初得点、通算13試合出場3得点。家族は両親と兄2人。利き足は右。175センチ、64キロ。B型。

 ◆UDラスパルマス 1949年創立。本拠地はカナリア諸島のラスパルマス・デ・グラン・カナリア。ホームスタジアムは3万1250人収容のグラン・カナリア。スペイン国王杯準優勝1回。2部だった07-08年シーズンにはFW福田健二が所属。今節消化時で、6勝7分け6敗の勝ち点25で11位。主力は元ガーナ代表MFボアテング。キケ・セティエン監督。クラブカラーは黄と青。同じ諸島を本拠とするテネリフェとの対戦はカナリアダービーとして知られる。

 ◆カナリア諸島 スペイン本土から南西に約1100キロ離れたアフリカ大陸北西沿岸に近い7つの島からなる群島。ラテン語で犬の島の意。本土と時差1時間で税金も安い。年間平均気温は21度と常夏で「大西洋のハワイ」と称される観光地。4つの国立公園と3つの世界遺産があり、ラスカンテラス海岸は世界一美しい海岸の1つ。テネリフェ島のテイデ山(3718メートル)は同国最高峰。年間1000万人が訪れる観光と、バナナやたばこの輸出が主な産業。食はマンゴーやパイナップルなどの果物や、サンマやタイ、イカ、タコなどの魚介類が人気。2月に開催されるサンタクルスカーニバルは国際的にも有名。人口は約210万人で、在留邦人は200人弱。面積は約7450平方キロで、宮城県とほぼ同じ。