久保建英のプレー分析も…直接取材はできなかった

後半、Uー18J選抜FW久保(左)は日本高校サッカー選抜MF大塚から厳しいマークを受ける(撮影・小沢裕)

<ゼロックス・スーパー杯・ネクストジェネレーションマッチ:U-18Jリーグ選抜0-4日本高校サッカー選抜>◇18日◇日産ス

 FC東京ユースのFW久保建英(15)が18日、横浜市内の日産スタジアムで行われた、ゼロックススーパー杯の前座・ネクストジェネレーションマッチU-18(18歳以下)Jリーグ選抜対日本高校サッカー選抜戦にフル出場した。

 久保は随所で非凡な才能の片りんを見せた一方で、35分ハーフ、70分強の試合の中で打ったシュートは1本に終わった。両チーム通じて唯一の中学生として、全国高校サッカー選手権を戦い、プロや大学に進む選手と対峙(たいじ)する中で、体格差で押さえ込まれる場面もみられた。

 試合後、日本高校サッカー選抜の選手を取材した中で、久保の才能、プレースタイルと、試合で見せた課題が浮かび上がってきた。

 DF阿部海大(17=東福岡)センターバックとしてフルタイムにわたって久保と戦った。開始40秒で左サイドからドリブルを仕掛けてくると、ゴールライン付近まで競り合い力ずくで突破を食い止めた。

 <久保の長所>

 (1)体の使い方がうまい 体を入れても、すり抜けてくるので、しっかり、ずっと入れておかないと抜かれる。動きも速い。

 (2)フェイントを交えた目線 (間合いに)入る前にチラチラ見ているんで、こちらも突っ込みにくくて1発では行けなかった。ずっと見ているので、思い切り行きにくい。見ているのでこっち(のコースを)切らないと、と思うと、こっち(逆)に来たりする。

 (3)ポジションチェンジを含め、ピッチの各所を動き、DFをかく乱する FW中村駿太(17=柏レイソルユース)と交互に入れ替わることが多く、マークにつきにくい。それ(動き)は他のユースの選手とも違う。監督に「(マークに)行け」と言われても行けない時があった。

 <久保の短所>

 (1)フィジカル面 体はそんなに強くなくて、当たったら勝てる感じ。黒田剛監督から「ボールに先に触らせないようにガツガツ行って、ひるませるような感じでいけ」と言われたのでガンガンいきました。

 MF住永翔(18=青森山田)日本高校サッカー選抜の主将。ボランチで攻守にわたりチームをコントロールした。前日会見では久保への警戒を口にした。

 <久保の長所>

 (1)ボールの持ち方と体の使い方がうまい 誰もが中学3年と聞いたら、驚くようなレベル。学年を感じさせない。FC東京U-23の方もやっていて、いろいろな経験をしている中で、ボールの持ち方が人とは違う。上手だなぁと。

 (2)嫌なところに入ってくる 相手の逆を突くのがうまい。流れの中で中にいたり、サイドに張ったり、ボールが来る感覚は、各選手にあると思うけれど(こちらの)嫌なところに入ってくるイメージがあった。駆け引きが楽しかった。

 (3)視野が広い 後半9分に、右サイドから速いドリブルをしている中でも逆サイドにロングボールを出せる視野の広さがある。

 (4)姿勢がいい ヘッドダウン(頭が下がる)しないので頭があまりブレない。他の選手がどこにいるか感覚視野で見えている。

 両選手の話を総合すると、久保はボールの持ち方や体の使い方において、日本人離れした感覚を持っている。その上、ピッチ全体を俯瞰(ふかん)し、対戦相手にとって嫌なスペース=攻撃に有効なスペースを判断し、突く視野の広さ、判断力があることが分かる。

 一方、阿部が指摘するように体が出来ていない点は否めない。住永も「マンツーマンではなく、全体を見て守備をして要所要所でタイトにいけていた」と組織的に守備をすれば抑えられると断言した。ただ、全国の高校生の中でも優秀と評価され、卒業後、上を目指そうという選手を驚かせるプレーを、中学3年生の久保が見せたことは事実だ。

 取材後、久保が15歳5カ月1日でのJリーグ最年少デビューを果たした、16年11月5日の東京U-23対長野のJ3リーグ戦後に取材した、長野MF橋本英郎(現J2東京V)の感想を思い出した。

 橋本 体が出来上がっていない感じ。技術は、すごい高いものがあると思いますし2つ、3つ先を考えながらプレーしたと思いますけど、なかなか周りとのコンビネーションだったり…久保君のプレーをチームメートが分かっていたのかなという感じがありました。体を着けた状態でプレーすると、どうしても体格的な問題があると思う。

 橋本の言葉を借りれば、J各クラブから選手が集まった選抜の選手が、久保のプレーを分かっていなかったように見受けられた。久保は何度も要求しながらボールが来ないことに、失望感を見せる場面もあった。一方、年代が近く、試合で肌を合わせた選手も多いからか、東京U-23の試合時よりも伸び伸びと、より積極的にプレーしているように見えた。

 それらを久保本人に直接、取材できなかったことが残念だ。JリーグとFC東京が協議し、試合前々日の16日から当日まで取材規制すると報道陣には事前通告があった。その対応を過保護だと批判する報道もあれば15歳の選手への配慮は当然という報道もある。

 記者はこの日、どのような形であっても久保が肉声を発し、報道陣が取材する機会はあった方が良かったと考える。たとえゼロックススーパー杯の前座であっても、Jリーグの一員として、日産スタジアムという大舞台で1万4214人という観衆の前で戦った後、取材を受けるという経験が、果たして悪影響ばかり及ぼすだろうか? 

 この日、久保はスタッフに伴われ、1人だけ取材対応せず取材エリアを後にした。そのような“特別待遇”をするなら、せめて両軍の監督と選手1人ずつが出席した会見に、久保を出席させ、司会者の代表質問だけでも受けさせ、感想くらい本人の口から語らせても良かったのではないか? 

 久保自身、J3長野戦後の取材で「サッカー選手になった時は、やっぱり注目されなくなったら良くないなというのはある」と語るなどプロがどういうものか、しっかり把握している。自分の口で自分の考えをしっかり語る姿を、記者は見ている。だからこそ、久保のこの日の思いを直接、聞きたかった。【村上幸将】