カズ50歳開幕!超満員にウルッ「60歳まで戦う」

試合後、ピンクのスーツ姿で報道陣の対応を終え、「走ろうか」と笑顔を見せるカズ(撮影・狩俣裕三)

<明治安田生命J2:横浜FC1-0松本>◇第1節◇26日◇ニッパツ

 横浜FCのFWカズ(三浦知良)が新たな金字塔を打ち立てた。50歳の誕生日に迎えたJ2開幕松本山雅FC戦に先発出場。自身の持つJリーグ最年長出場記録を50歳0日に更新した。2トップの一角として後半20分までプレーし、シュート1本に終わったが、1-0の勝利に貢献した。試合後はど派手なピンクのスーツに着替えてピッチ上で誕生日会。ホームのニッパツをカズ一色に染めた。

 カズがまた1つ歴史を重ねた。運命的な50歳の誕生日に迎えたJ2開幕で、史上初の50歳Jリーガーとして先発を勝ち取った。「選手として50歳を迎えられたことは本当に幸せです。たくさんの観客に囲まれて、スタジアムに入ったら、試合前だったけれど泣きそうだった。あらためて60歳まで戦いたいと思いました」。プロ生活32年目。会場はクラブ史上最多の1万3244人で埋まった。これまで何度も結果を出してきた男にとってこれ以上ない舞台が整った。

 試合直前のロッカールーム。円陣でカズが仲間を鼓舞した。「ここに居られることが最高の誕生日プレゼントです。みんなに助けてもらってここまできた。今日は俺に関係なく、勝つことに集中しよう」。仲間も感極まるげきだった。

 最初のボールタッチは自陣ゴール前。前半5分、相手CKを左足でクリアした。直後のCKも頭で防いだ。後半12分にはゴール前で右足のミドルシュート。同20分まで65分間プレーした。「攻撃に対しては物足りないですが、DF面の連係としては良かった」。中田監督は「後半は僕のルールを無視して点を取りにいくプレーをした。カズが点を取れば世界もサポーターも喜ぶし、取ってほしかった」と苦笑い。守備での貢献も求められているが、最後は得点への渇望が、監督の指示を上回った。体が自然と前へ向いた。

 次節アウェー長崎戦に出場すれば50歳7日。元イングランド代表でサッカー選手の手本とされるスタンリー・マシューズの50歳5日を超える。摂生に努め、警告が1度もなかった伝説の男。カズも似ている。Jリーグで1度も退場はない。今でも、年俸のほとんどは体のために使う。30代の頃から365日態勢で専属トレーナーをつけ、毎食を栄養士に確認してもらってから摂取。練習前後も人一倍ケアの時間に費やす。シーズン中はアウェー試合から横浜に戻ると、深夜でも真っ暗なグラウンドを1人黙々とランニングする。

 試合から1時間後、紫のベストにピンクのスーツでピッチに登場。報道陣からケーキと50本のバラが贈られ、誕生日会が始まった。「体力的なところは正直厳しくなってきているけれどね。その中で技術だとか駆け引きだとか、経験で補えるものはある。目の前の試合に出て、ゴールしたい。それが目標です」。史上初の50歳弾は持ち越したが、大きな活力も得たバースデー白星となった。【鎌田直秀】