浦和興梠、得点のコツはクロスへの入り方/岩政大樹

岩政大樹(左)と浦和レッズの興梠慎三

 サッカー元日本代表DF岩政大樹(35=関東1部リーグ東京ユナイテッド所属)が、J1得点ランキング首位に立つ浦和レッズFW興梠慎三(31)に、その進化の理由を聞いた。

 岩政はスカパー!のサッカー情報番組「スカサカ!ライブ」の対談コーナー「今まさに聞く!」のメーンキャストとして、かつて鹿島アントラーズで一緒にプレーした興梠をインビュー。今季J1で19ゴールを挙げ、得点ランキングの単独トップに立っているストライカーのプレーについて、互いの意見を余すことなく交わした。

 10月20日(金)の初回放送(21時~)を前に、サッカーファン必見のインタビューの一部をここで紹介する。

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 岩政 まず今シーズン得点ランキング1位ですが、ちょっと驚きですか?

 興梠 そうですね、レッズのサポーターの方には毎年シーズン始まる前に得点王取ってくれ! と言われるんですけど、得点王って20点ぐらい確実に取らないとなれないですし、シーズンそんなに取ったことはないので「分かりました!」とは言うけれど「取れるわけないじゃん…」って心の中では思ってましたけど、まさか今19点でトップ(2位は川崎フロンターレFW小林悠とセレッソ大阪FW杉本健勇の17点)に立ってるってことは自分でも褒めても良いかなという気はしますが、チームがちょっと低迷しているのでそこが気になるなという感じはします。

 岩政 得点が増えたことに対して自分ではどのように分析していますか?

 興梠 自分で切り込んでシュートを打つっていうタイプではないですし、チームメイトがパスをつないで最終的に自分のところに来るっていうパターンで取る得点が多いので、チームメイトのおかげだと思います。最近では「慎三に取らせてやろう!」とみんながボールを出してくれるので、本当にチームメイトのおかげだという気がしています。

 岩政 浦和に来て5年目ですが、興梠選手の要求と出し手の関係も良くなってきたんですか?そんなに今年になって変わったというわけではないですよね?

 興梠 一番は自分の特徴を完璧にみんなが知ってくれたっていうのが大きいなと思いますし、自分も周りに要求するようになったっていうのも点が取れている要因かなと自分なりには思います。

 岩政 要求っていうとことで言うと、ゴールを取るポイントっていうのが整理されてきたよう気が見ていてするんですけど、得点の形が論理的というか、相手がこうやって動いてくるからここ入ったら取れるなっていうのが見えてるなと見えるんですけれども。

 興梠 裏を取るとかは鹿島時代からそんなに変わっていないと思うんですけれども、やっぱりセンタリングの入り方は前に政さん(岩政)と会った時に「上手くなったね」と言ってくれましたけど、そこが凄く自分の中でもやっぱり工夫して上手くいっているのかなという気はしているし、センタリングの入り方はちょっと変えるだけでこんなにも点が取れるんだなと感じましたね。

 岩政 あれはどこで気づいたんですか? 今年大きく変えたわけではないんですよね? 継続の中で見えてきた感じですか?

 興梠 なるべくフォアから相手の背中から前に行く動きですかね。やっぱり政さんとかもヘディング上手かったから真似をしようとはそういうタイプではないので思わなかったですが、鹿島時代から一緒にやっていることで身についたのかなと気はしますけど。

 岩政 慎三はサッカーのフィールド上では凄くツボを抑えている選手になったじゃないですか。そこはピッチの中でどういう風に見つけてますか?

 興梠 一緒に(政さんと)鹿島でプレーしているときは自分は随分若手で、政さんもそうですけどオーバーエイジの人が試合に出ていて、見て学ぶ、やりながら学ぶことが多かったですけど、自分も今は31歳になってまずは若手に背中で見せたいっていうのが(あって)、鹿島の時も背中で見せてくれる先輩っていうのがいっぱいいたので、そこが自分的にも勉強になったし、それを自分もやりたいなっていうのがあって。もちろん、政さんの言う通り全然勉強もしてこなくて、大してサッカーのことは知らなかったですけど、でも鹿島での経験が自分にとって大きかったかなという気はしますけどね。

 岩政 鹿島時代の見てきたものを自分の中で消化しながら自分なりを作っていったと?

 興梠 そうですね。柳さん(柳沢敦=現鹿島コーチ)に憧れて柳さんと一緒に同じチームで勉強しながらやらしてもらって、かといって柳さんより上にいきたいという自分もいますし、そういう意味では鹿島にいるときは精神的にも技術とかそういうのも含めて勉強になったかなと思います。

 岩政 今年のレッズですが、僕たちも見ている方もやっている選手もなぜこうなったかという思いがあると思うんですが、中ではどのように捉えようという感じですか?

 興梠 自分的には、堀さんは(ペトロビッチ前監督と)違うサッカーをしたいと思うんですよ。4-3-2-1がやりたいと思うんですけど、それに見合った選手がちょっといないのかなと思って。ミシャが3バックに合う選手を獲って、いざミシャが居なくなった時に堀さんがやりたいサッカーに選手が合わないから、堀さんは凄く戸惑っていると思います。もちろん慣れない4バックでも選手はやろうと思っているですけど、なかなかそれがうまくいってない部分の方が多いのかなと。

 岩政 昨年までは比較的失点も少なく、攻撃も素晴らしくてシーズン通して素晴らしい勝ち点も取りましたけれど、今年あれだけ失点が増えたっていうのは、流れも含めてなので一概に理由は語れないとは思いますが、どうして歯車が狂ったんですか?

 興梠 政さん、俺が聞きたいですよ。本当に…。

 岩政 興梠選手含めて選手は「ミシャ(ペトロビッチ)監督のために」というのがあって、それが逆に空回りするような状況にはなったと思うんですけど、とは言ってもあれだけ大きく結果が変わってしまうというのは今年のJリーグの中でも一つの驚きのトピックスだったと思うんですけど。

 興梠 去年最少失点で守備が凄く安定していたので、人もそこまで変わっていないし、後ろに関しては全く変わっていないので、ちょっとのところなんですよね。僕たちは後ろから組み立てて相手が前から来てもそれを剥がしていくサッカーなんで、そこでちょっと奪われ方が悪くて失点することも多かったので、チャレンジする意味では良かったですが、やっぱり時間帯によっては押されていたら一回蹴って押し上げてとかそういう賢さが少しなかったのかなと。みんなが喋る一言一言が「失点しないようにしよう」だったので、失点を気にする頭になってしまっているんですよね。それが良くなかったのかなと。去年だったら「先に点取りにいくぞ!」とか「大量得点しようぜ!」とかだったから逆にうまくいっていたのかなと。今年は守りになっていたっていうのが良くなかったのかなと。

 岩政 気をつけようと思えば思うほどそっちにいってしまうっていう。

 興梠 だから政さんとか後ろで、ガーガー言うじゃないですか。うるさいほど、そういう人がそういう時には大切なのかなと思う。鹿島時代は「うるさいな…」っと思っていたけど、この歳になって大事だなと思いますよ。

 

 ▽放送情報 10月20日(金)サッカー情報番組「スカサカ!ライブ」 今まさに聞く~浦和レッズ興梠慎三篇~前編 <21:00~22:30 スカサカ!(CH800/580)再放送多数>