湘南菊地J2優勝転機は5・27“緊急会談”と語る

湘南対岡山 サポーターと一緒にラインダンスで盛り上がる湘南イレブン(撮影・横山健太)

 湘南ベルマーレMF菊地俊介(26)は、14年以来3年ぶりのJ2優勝を決めた転機として、0-1で敗れホーム初の連敗を喫した、5月27日のモンテディオ山形戦後の“緊急会談”を挙げた。

 煮え切らない展開の中、後半ロスタイムの失点で敗れた後、菊地とGK秋元陽太(30)、MF藤田征也(30)、そして3月25日のジェフユナイテッド千葉戦で右ひざ前十字靱帯(じんたい)を痛め、全治8カ月の重傷を負ったFW高山薫(29)の主要4選手は、BMWスタジアムの1室に呼ばれた。

 そこで約1時間半にわたって行われた会談の中で、4人は曹監督から選手の自立心のなさを厳しく指摘された。試合中、ピッチ内で選手が意見を言い合えないことに対して「自分が出来ないから周りに要求できず、テンションが下がって決めきれない。まだまだ甘い。自分が出来ないから人に要求できないという、くだらない善人ぶりをやめてほしい」などと叱責された。

 菊地は「あそこでチームが変わって、練習からみんなが要求するようになった。(1点を争う)厳しいゲームをものに出来るようになった。分岐点だったと思う」と振り返った。選手同士が言い合うようになったことは、J1柏レイソルから加入し定位置を確保したMF秋野央樹ら新戦力が、湘南のサッカーを理解することにもつながった。菊地は「湘南のサッカーが走り、球際に相手に負けないことが要求される。若い選手や新加入の選手が、理解してやってくれたのも大きかった」とも語った。

 昨季、J1残留を逃した要因の1つが、曹監督の高いカリスマ性に選手が依存し、監督の言葉に頼るあまり、自立性を欠いたことだった。曹監督は今季「共走」という造語をテーマに掲げ、3つの意味を込めて、1月16日の始動日から選手に要求してきた。

 (1)みんなで走っていく

 (2)勝つために、いい競争をする。日本の他のクラブ、社会に対して自分たちがやれること、表現できることで勝負する

 (3)今日、走る。今できることは今やる

 山形戦を境に、選手が「共走」への道を走り始めたことが、この日の優勝につながった。

 その曹監督も「監督を受けるにあたって正直、どうしようかな、どう作っていこうかなと」、「湘南の皆さんが期待し、求めているものを、また0から戦術的にもメンタル的にも、今までと同じ作りでアプローチしても、うまくいかない。難しい…今も難しいと思っていることが、顕著に出た1年」などと悩みを抱えながら戦っていた。菊地は、そのことを伝え聞くと「曹さんが、そこまで悩んでいたとは思わなかった」と言い、声を詰まらせた。

 そして、曹監督が「このクラブを何とかしたいという気持ちは、僕は恐らく人よりは強いと思っている」と語ったと聞くと「うれしいですね」と言い、目を潤ませた。【村上幸将】