旭川実・中里、昨年の雪辱果たし全国4強目指す

トレーニングの準備をする旭川実MF中里(撮影・浅水友輝)

 第96回全国高校サッカー選手権(12月30日開幕、埼玉スタジアムほか)の組み合わせ抽選が20日、東京都内で行われた。2年連続6度目出場の旭川実は31日の1回戦で宜野湾(沖縄)と対戦する。全国8強入りした8月の高校総体で優秀選手に選ばれたMF中里颯汰(3年)は部員72人中唯一の道外出身。89年はまなす国体で北海道選抜として富居徹雄監督(45)とプレーした父泰浩さん(46)に背中を押され、北国にやって来た攻守の要が4強入りをけん引する。

 

 大会まであと約1カ月、中里は雪が舞うピッチでチームメートがウオーミングアップする様子を感慨深げに眺める。「このメンバーでやるのは選手権で最後。今から楽しみ」。兵庫から進学して3度目の冬だが、旭川市の寒さにはまだ慣れない。それでも初戦の対戦相手も決まり、気持ちは熱くなってきた。

 極寒の地に飛び込んだ。「まったく実力がなかった」という中学時代、全国出場経験はなく、県選抜に選ばれたこともない。中学3年の夏、父泰浩さんと富居監督が同学年で北海道選抜のチームメートだったことから、大阪のサッカーイベントに来ていた旭川実の試合に参加した。「チームの雰囲気が良かった。ここで全国を目指したい」と北海道行きを決意した。慣れない土地での生活。当初は関西弁を封印し、チームに溶け込む努力もした。

 富居監督と泰浩さんは89年はまなす国体で4強に進出した(決定戦で3位)。中里のプレースタイルには、その2人のDNAがミックスされ受け継がれている。「前線へのパスや、落ち着いて周りを見られるのは父に似ている」と富居監督。一方で泰浩さんは「こぢんまりとしなくなった。高校のときの富居先生のような力強さも感じる」という。中里自身も「旭川実に来て自分でもうまくなったと思う。富居先生に考える力を教えてもらった」という。

 昨年の選手権は1回戦で米子北(鳥取)に0-3で完敗した。中里はケガで負傷した主将の代わりにスタメンでフル出場したが「なにもできず、屈辱だった」と振り返る。悔しさをバネに8月の高校総体で、過去最高の8強入りに貢献した。目標は父と監督が成し遂げた全国4強。「最後なので絶対勝ち上がりたい」。昨年の雪辱と、そして父超えを目指す。【浅水友輝】

 ◆中里颯汰(なかさと・そうた)1999年(平11)12月30日、兵庫・芦屋市生まれ。父の影響で競技を始め、小、中学では芦屋サッカークラブに所属。ポジションはボランチ。趣味は読書で、好きな作家は伊坂幸太郎。家族は両親と弟2人。169センチ、69キロ。

 ◆89年はまなす国体 北海道選抜チームで臨んだ少年男子は、1回戦で長野を2-0で下すと、2回戦はFW富居(旭川東)の2ゴールなどで鳥取に5-0と圧勝。大阪との準々決勝ではMF中里(登別大谷)のシュートのこぼれ球を富居が決め先制。4点目も中里のセンタリングを富居が押し込んだ。富居はハットトリックを挙げる活躍で、初の4強入りに導いた。