浦和、失意乗り越えアジア王者 阿部CBで守備安定

ACLで優勝し歓喜するDF阿部(前列中央)ら浦和イレブン(撮影・江口和貴)

 浦和レッズがアルヒラル(サウジアラビア)に1-0で勝ち、10年ぶり2度目のアジア王者に輝いた。後半43分にMFラファエル・シルバ(25)がゴールを決め、2戦合計2-1でアジアの頂点に立った。今季は国内で優勝候補に挙げられながら無冠、監督の途中交代など失意を味わった。堀孝史監督(50)のもとで守備を立て直し、苦難を乗り越えた。浦和は12月にUAEで開催されるクラブW杯に出場する。

 10年ぶりの歓喜を告げる笛が埼玉の寒空に響くと、選手たちは抱き合って喜びを爆発させた。残り10分は攻め込まれたが、決死のブロックでシュートコースを遮断。後半43分に敵陣でボールを奪い、最後はMFラファエル・シルバがゴール右上へ決めた。堀監督は「ベースを築いてくれた、ミシャ前監督に感謝したい」と真っ先にペトロビッチ前監督の名を挙げ、「選手たちがよくやってくれたな、という気持ち」と静かな口ぶりで優勝をかみしめた。

 得点が絶対条件の相手に前半から攻められた。セカンドボールを拾えない時間が続いたが、速い切り替えで帰陣した。後半34分にはじれた相手MFダウサリがDF遠藤に乱暴にぶつかり、2枚目の警告で退場。チームとして課題だった我慢でアルヒラルを上回った。終盤はサイドに回って守備に走ったFW興梠は「内容には納得していないが、レッズに足りていなかったところ」と成長を実感した。

 失意を味わった。今季は失点が増えて低迷した。34試合で28失点だった昨季から一変して12試合を終えて15失点。6季目を迎えていたペトロビッチ監督が解任となった。翌日の練習に向かう選手たちの目には涙があった。

 後を継いだ堀監督を中心に、守備を改善した。練習から線審を置き、ディフェンスラインに統制の意識を持たせた。それを高めたのが、主にボランチ起用だったMF阿部主将のセンターバックへの配置換えだ。「ラインの上げ下げとか、阿部さんを中心にかなり意識が高くなった」とDF宇賀神。ペトロビッチ体制のACLではボールを奪われてから平均で約12秒でシュートに持ち込まれたが、堀体制では準決勝までで約24秒。同様にパスを回された数は平均約3本から約7・5本。早いライン構築によって、失点の要因になりやすいショートカウンターの威力をそいだ。

 初優勝から実に10年。栄光を知る選手は阿部とMF平川の2人だけになった。平川は感慨とともに「10年かかるとは思ってなかった」。長い時を経て、再び浦和がアジアの頂に立った。【岡崎悠利】

 ◆浦和レッドダイヤモンズ 1950年創部の三菱自動車を前身とするクラブ。91年Jリーグ加盟。観客動員は加盟クラブ最多。リーグ優勝1回、Jリーグ杯と天皇杯は優勝2回ずつ。07年に日本勢初のACL制覇。本拠地は埼玉県さいたま市、ホームは埼玉スタジアム。

 ◆07年決勝VTR セパハン(イラン)と対戦。アウェーでの第1戦を1-1で乗り切り、5万9034人が詰めかけたホーム埼玉スタジアムでの第2戦は、前半22分にFW永井雄一郎のゴールで先制。後半26分には腰痛を押して強行出場したMF阿部勇樹が、追加点。故障者続出の守備陣が無失点に抑えて2-0で勝ち、2試合合計3-1で初優勝した。永井が大会MVPに選ばれた。