藤枝順心、群を抜く厚い選手層で全試合0封完全優勝

応援スタンドの前で、MF千葉玲海菜(中央)が優勝杯を掲げ、歓喜する藤枝順心の選手たち(撮影・大野祥一)

 藤枝順心(東海2)が、2大会ぶり3度目の優勝を飾った。決勝で作陽(岡山・中国1)に2-0で勝利した。相手に押し込まれる時間が続いた前半40分、昨年FWに転向した青木なつみ(3年)が先制し、5分後には並木千夏(3年)が追加点を挙げた。後半は主将MF千葉玲海菜(3年)を中心に守りきり、同校史上初の無失点優勝。今夏、藤枝市で開催される全国高校総体女子サッカーに向けて、弾みをつけた。

 ピッチに藤色の笑顔が咲いた。優勝を告げるホイッスルが響いた瞬間、藤枝順心イレブンが抱き合った。主将の千葉は、ほほえみながら言った。「初めは実感がなかったですが、みんなで笑顔で終わることができてうれしいです」。

 押し込まれる展開が続いていた前半40分、エースFW今田紗良(3年)のドリブル突破からパスを受けた青木が、左足でシュート。相手GKの手に触れたが、ボールの勢いが勝った。「決勝は今田のマークが厳しくなるから、自分が決めようと思っていました」。

 FW歴わずか7カ月。2年まではセンターバックだったが、昨夏の全国総体で、体の高さと強さを買われてコンバートされた。背番号8は、2大会前に優勝した際の主将DF黒崎優香(ケンタッキー大)と同じだ。「優香さんのようにしっかりプレーしようと思っていました。少し超えられたかな」。

 5試合で22得点を挙げ、同校としては初の無失点優勝。多々良和之監督(53)が、何度も伝えていた「今年は圧倒して勝て」を選手が実行した。千葉は最終ラインに入って守備をする場面も多く、中盤の要になった。中学まではFWで、積極的に前で仕掛けるタイプ。立場が変わり、父秀樹さん(47)に「守備をしっかりしないといけない。本当はもっと前にいきたいのに…」と伝えたこともあった。だが、日本一になった司令塔は「後悔はありません。全員の守備意識が高く、連係して守れました。みんなに支えられました」と胸を張った。

 今春、筑波大に進学する千葉ら3年の公式戦は最高の形で終えたが、2年、1年は、新たな目標「地元で日本一」に向けて動き出す。今夏の全国総体女子サッカーが、藤枝市で開催されるからだ。多々良監督は力強く言った。「これでいいスタートが切れました。総体でも優勝を狙っていきたいです」。藤色の輝かしい歴史は、さらにつながっていく。

 ◆藤枝順心の強さの秘密

 藤枝順心の選手層の厚さは、群を抜いていた。応援スタンドの最前列で応援していたFW岩下胡桃(3年)は「これで終わりなのが寂しい」と泣いていた。優勝した15年大会では、1年ながら全5試合に先発。次世代エースとして期待されていたが、一昨年、昨年と続けて左足前十字靱帯(じんたい)を損傷。今もリハビリ中だ。チームには痛手だったが、多々良和之監督は「『胡桃がいたら』という気持ちはあるけど、どこのチームもケガ人はいる」と受け入れ、岩下抜きで日本一をつかみ取った。

 今大会は、下級生の活躍が目立った。得点女王はFW小原蘭菜(1年)。「藤枝順心のパスサッカー」に憧れ、足元の技術、戦術理解の高い選手たちが全国から集まっている。今季からは、盛岡商時代にDFで全国高校選手権優勝の経験がある中村翔コーチ(29)が就任。DF大村琴美(3年)は「中村先生が来たことで、守備を意識して練習するようになりました」と証言する。

 高い攻撃力と堅い守備。現チームでも主力を担った1、2年は、今夏の全国総体で全国V2に挑む。多々良監督は「今回の優勝で、総体への期待が高まると思う。それが地域活性化や、女子サッカーの盛り上がりにつながったら」。新チームはその使命を背負ってスタートする。【保坂恭子】