山形J1昇格へ新戦力ブラジル人トリオが引っ張る

山形が誇るブラジル人トリオ。左からDFジャイロ、MFアルヴァロ、FWフェリペ(撮影・高橋洋平)

 J2モンテディオ山形に加わった新戦力12人が、クラブ3度目のJ1昇格に導く。今季の目玉は2年ぶりに補強したブラジル人3人衆だ。DFジャイロ・ロドリゲス(25)は190センチの長身で、MFアルヴァロ・ロドリゲス(24)は正確な足元が自慢の左利き。FWフェリペ・アウヴェス(27)は頭や左右両足で多彩な得点パターンを誇る。3人の頭文字をとった“JAFトリオ”に注目だ。【取材・構成=高橋洋平】

 念願のブラジル人トリオがついに、そろった。入国手続きが遅れていたジャイロが、20日に静岡・御前崎キャンプに合流した。チーム最長身となる190センチのセンターバックとして攻守に力を発揮している。「空中戦では負けないし、ビルドアップも見てほしい」。利き足の左から繰り出すロングフィードで攻撃をアシストし、セットプレーの起点にもなる。G大阪へ移籍したDF菅沼の穴を完全に埋められる存在だ。

 アルヴァロも左利きながら、逆サイドの右が主戦場となりそうだ。ウイングもインサイドハーフも器用にこなし、相手を追い回す守備にも熱心だ。「右サイドだと中に切れ込んでシュートを打てるし、左サイドも任せてくれ」。足元の技術も正確で、プレースキッカーにも名乗りを上げる。

 フェリペは器用な両足に加えてヘディングも強く、多彩な得点パターンを持つFWだ。動きは多くないが、1発で決める集中力が光る。「自分の特長は決定力。たくさんゴールを決めたい」。昨季全42試合にフル出場でチームトップの13得点を挙げたFW阪野に挑戦する。

 Jリーグで初めてプレーする3人に共通しているのが、日本の文化に慣れようとする姿勢だ。14日の新加入会見でアルヴァロは「ハジメマシテ、アルヴァロデス」とたどたどしい日本語を話し、会場を沸かせた。また、そろって間もない3人の仲も良い。ジャイロは「2人に初めて会ったけど、プレーを見ても良い選手。日本人とブラジル人3人のバランスがチームのプラスになると思う」と手応えを強調する。陽気なブラジル“JAF”トリオは「みんなで力を合わせて、J1昇格に貢献したい」と口をそろえた。J1昇格は、俺たちに任せろ!

 木山隆之(たかし)監督(45=ブラジル人トリオについて)「ものすごく日本になじもうとしている。3人ともフレンドリーだし、やってくれると思う。可能性を引き出してあげたい」

<新加入メンバー>

 FW中村太 チーム内でのあだ名が「まるこめ」に決まり、他に「じゃがいも」とも呼ばれる。3歳から始めた丸刈りはプロ入り後も続け、愛用のマイバリカンで3ミリに刈り込む。プレーは170センチと小柄ながらパワフル。「この身長だからこそ、できることがある。ゴール前で競って仕事をしたい」と力を込めた。

 FW北川 筑波大OBの木山監督、FW瀬沼は先輩に当たる。ゴールに向かっていく積極的なプレーが光り「名前が“しゅうと”なので、ゴールへの推進力を注目してほしい。2桁取ります」と頼もしい。三重出身で、高校時代は名古屋U-18で三鬼とプレーしており「まさか一緒にできるとは」と驚いていた。

 MF小林 ステップアップを狙って、神戸から期限付き移籍で加入した。昨季はリーグ13試合に出場したが「途中出場が多かったし、思うようなプレーができなかった。試合に出て成長できるように」。MFとしてスピードに乗ったドリブルが光る。宮城・常盤木学園OGの日テレFW小林里歌子(20)は妹だ。

 DF松本 自慢の左足から繰り出すピンポイントクロスで定位置をつかむ。左サイドバックの専門家は「1対1のドリブルだったり、攻撃参加から上げるクロスに注目してほしい」と自信を見せる。プロ6年目だが、いまだに複数得点がなく「得点を狙えるようなプレーを心掛けたい」と強気に宣言した。

 DF三鬼 右サイドの攻撃の起点となる選手だ。正確なキックが武器で、戦術理解にもたけている。「つなぐ部分やビルドアップを見てほしい。けがをしないで試合に関わり続けたい」。趣味はカフェ巡りで、オフは誰かを誘って行くほどだ。「コーヒーは好きだけど、味は分からない。雰囲気を楽しみたい」と笑う。

 DF坂井 元日本代表で、チームにとっては貴重な長身センターバックだ。左足からのロングフィードから攻撃も組み立てることができ、ビルドアップを掲げるチームにフィットすれば面白い。1月1日に婚姻届を提出し「左足だけじゃなく、右足でも蹴られる。山形に骨をうずめる気持ちで来た」と鼻息も荒い。

 DF熊本 空中戦に強さを発揮する186センチの長身センターバックで、攻撃時にセットプレーの起点にもなる。「背が高いので、フィジカルが特長。1つでも多く試合に出たい」。昨年9月に練習を見学し、早大から加入を決めた。「チームメートが驚くほど、キャラが変わる」と言われる闘争心にも注目だ。

 GK射庭 アマ契約で京産大から加入した。183センチでGKとしては平均的な身長だが「頭を使ってやらないと勝てない。とりあえず上のカテゴリーで勝負したかった」と意気込む。最大の特長は大きな声で行うコーチング。「練習から影響を与えられるように。グラウンド中に響く声に注目して」と目を光らせた。

 GK櫛引 元リオデジャネイロ五輪代表がもう一花咲かす。優れた反射神経でシュートを止め、ロングキックで攻撃の起点をつくる。昨季はJ2岡山でリーグ6試合出場に終わり、保有元のJ1清水から契約満了となった。青森出身で山形も同じ東北。「つなぐ意識が高いのであれば、入っていける」と再起を誓った。