マイナビ仙台、櫨と市瀬 代表と両立で初タイトルだ

色紙に今季にかける決意をしたためた、マイナビ仙台FW櫨(右)とDF市瀬

 なでしこリーグのマイナビベガルタ仙台レディースは21日、ホーム(ユアスタ)で昨季7位のジェフユナイテッド市原・千葉レディースと開幕戦を行う。悲願の初タイトルを、女子日本代表のFW櫨(はじ)まどか(29)とDF市瀬菜々(20)がもたらす。2人は、8日までポルトガルで行われたアルガルベ杯に出場。6位に沈んだが強豪との戦いを通じ、レベルアップし帰ってきた。昨年ともに代表デビューを果たした2人は、クラブとの両立に不安はないと言う。19年ワールドカップ(W杯)フランス大会の予選も兼ねる来月のアジア大会(ヨルダン)も見据えながら、クラブでの活躍を誓った。【取材、構成・秋吉裕介】

 櫨は昨年7月から代表入りした。「半年間はあっという間でした。最初は訳も分からずに、でも何とか乗り切れました」。代表で期待されるボールキープ力は、新天地でも求められる。市瀬から「キープ力があって、もらうタイミングも上手。ボランチとして頼ってしまう。去年のケイト(オーストラリア人FWケイトリン・フォード)とは違い足元が上手なので、去年にプラスされた感じになると思う」と頼りにされる存在だ。

 櫨は「代表は慣れてきた分、今になって疲労を感じます」と言い、アルガルベ杯で壁にぶち当たった。大敗したオランダ戦に1トップで出場したが、後半で交代。「収穫はなく残念な大会となった。相手のスピードや強さを実感した。トラップ、パスの1つ1つの精度をもっと上げないといけない」との反省を糧にし、今季のタイトル獲得と19年W杯出場へ挑む。

 頼もしいパートナーがいる。昨年末、移籍と同時に結婚を発表。出会いは2年前の伊賀時代。夫が経営する子ども向けのサッカー教室に参加し、知り合った。「独自にメンタルトレーニングについて勉強していて、アドバイスをもらっています。オランダ戦の後もとりあえず、カツを入れられました」。現在は仙台で新婚生活を送り「呼び名ですか? 内緒でお願いします」とほほ笑んだ。

 仙台での生活は、聖和学園高以来12年ぶり。「街もきれいになって、学校のグラウンドも人工芝になって、駅までできていた。まだ忙しくてこれから(街へ)行こうかなと」。気になるのは、同校近くのパン屋「ジャンヌダルク」のカレーパン。「カレーパンは好きじゃないけど、ここのはおいしい」と待ちわびる。

 シーズンの目標ゴール数は立てない。だが「持っているものを出し切って、タイトルをいくつか取れたらいい」と気合を入れた。19年W杯へ向けても「もう1回、体作りから仕上げていきたい」と意気込んだ。

 市瀬は代表で9試合に出場し、クラブでは1年目からセンターバックとして、出場してきた。しかし、昨季はリーグ戦終盤に膝を故障してしまい、皇后杯を欠場してしまった。市瀬は「今年はケガから復帰して練習もできている。千葉合宿でのなでしこ交流戦も3試合全部勝てていて、いい流れでリーグ開幕へ向け、来ている」と白い歯を見せた。故障の苦い経験から、ケアの時間を増やし、同年代が好むスナック菓子やインスタント料理は口にしない。

 今季からは常盤木学園高以来のボランチに取り組む。越後和男監督(52)は「得意なインターセプトが生きると思った。しっかりとしたボールテクニックがあるので、攻撃ではそれを生かして欲しい。守備でもセンターバックより相手を読みやすい」と配置転換の理由を説明した。

 市瀬は3試合に先発したアルガルベ杯でも、デンマーク戦はボランチを任せられ勝利に貢献。今後の代表での起用方法は未知数だが、ボランチの経験は代表でも生きるはずだ。「ボランチだと相手のプレスは速いが、代表でセンターバックに変わるとプレッシャーが楽になる。だから、ビルドアップが楽になる」。同杯初戦のオランダ戦で6失点し「久しぶりに外国人と戦って、スピード感もあり対応できなかった」と悔やむ若手にとって、配置転換は成長につながるはずだ。

 櫨は憧れの存在。「普段はお姉さんで頼もしい。かっこいい着こなしなんです」と発言すると、櫨から「初めて言われた」と笑われた。だが続けて「練習の走り方1つにしても、かっこいい」と市瀬。代表では以前から櫨を「心強かった」と話しており、プレーにも好影響を及ぼしそうだ。

 クラブでタイトル獲得の前に、W杯進出を決めたい。アジア杯ではオーストラリアを注視。「アルガルベで4位とすごい実力のあるチーム。どの試合も厳しい戦いになるが、初戦から全力で」とまずは初戦のベトナム戦必勝を誓った。

 ◆櫨まどか(はじ・まどか)1988年(昭63)7月8日、愛知県名古屋市生まれ。聖和学園卒。07年INAC神戸へ加入し、10年から全日本女子選手権(現皇后杯)2連覇、11年なでしこリーグ優勝に貢献。今季、伊賀から加入。国際Aマッチ7試合0得点。164センチ、59キロ。

 ◆市瀬菜々(いちせ・なな)1997年(平9)8月4日、徳島市生まれ。13年常盤木学園(宮城)に進学し、2年時U-17女子W杯、3年時U-19選手権(AFC)で優勝。16年マイナビ仙台に加入し、同年のU-20W杯で銅メダル獲得。国際Aマッチ9試合0得点。160センチ、体重57キロ。