宮本ガンバ劇的1勝 ツネ様思わずピッチに“乱入”

後半ロスタイム、アデミウソンの決勝ゴールにピッチまで飛びだしガッツポーズするG大阪宮本監督。右はMF高(撮影・加藤哉)

<明治安田生命J1:G大阪2-1東京>◇第21節◇10日◇パナS

 宮本ガンバが待望の初勝利を挙げた。ガンバ大阪の宮本恒靖新監督(41)は、就任4戦目のホームFC東京戦を2-1で勝利。前半に先制しながらも同点とされる苦しい展開だったが、後半ロスタイムにFWアデミウソン(24)が左足で勝ち越し弾を突き刺した。5月2日仙台戦以来、約3カ月ぶりの白星。昨季までG大阪を率いた東京・長谷川監督との対決を制し、暫定16位に浮上した。

 冷静な男がほえた。宮本監督は両手でガッツポーズ。思わずピッチに“乱入”してしまうほど興奮を抑えきれなかった。同点の後半ロスタイム、ラストプレーでMF高のパスを受けたFWアデミウソンがボールをキープ。反転しながら、左足でゴール右隅に決めた。ロスタイム4分ギリギリ。最後のワンプレーだった。劇的弾を見届け、右手で小さいガッツポーズが「定番」の指揮官が、初めて両手の拳を強く握った。

 「(勝ち越しの瞬間)うれしかったですね。みんなが欲しかった勝利」

 壁を打ち破った。就任からつかめそうでつかめなかった白星。この日も苦しい展開で、前半34分にDFファビオの得点で先制したが、後半41分に追い付かれた。前々節の磐田戦、前節名古屋戦に続き、後半に痛恨の失点。だが、選手は諦めなかった。指揮官は「選手がどういうリアクションを見せてくれるかと思ったが想像以上だった。同点とされても立ち向かう姿を見せてくれた」。DF三浦は「一瞬またか…とよぎったと思う。でも最後まで諦めず戦えた」と胸を張った。

 7月23日、レビークルピ前監督に代わり新監督へ就任。まずはJ2降格危機が迫るチームの精神面を立て直した。時に熱い言葉で奮起させた。言い続けたのは「下を向くな」。その言葉について、宮本監督は「僕自身、現役時代、ロスタイムに失点して勝利を逃すことが何回もあった。気持ちがすごく分かる。でも、下を向くのは一瞬。誰かが前を向かせなければ」と説明。指揮官の思いが選手に届き、結実した。

 毎試合、先発を入れ替え、活性化も図った。J3のU-23監督時代の教え子MF高(こう)と高江は、勝ち越し点をお膳立て。J1デビュー戦で先発に抜てきした高卒3年目FW一美(いちみ)は、何度もゴールに迫った。宮本監督も「今後も期待したい」と目尻を下げる活躍だった。

 J1では9試合ぶりの勝利。順位も暫定で16位とJ2降格危機に変わりはない。「まだひとつ勝っただけ」。指揮官の表情も厳しくなる。それでも、この1勝は確かな自信になった。ここから宮本ガンバは上昇していくはずだ。【小杉舞】

<宮本監督就任後、G大阪の変化>

 ◆練習時間 午前中から、選手の体調や暑さを考慮して夕方開始に。

 ◆練習内容 流れを止めない試合形式中心だったが、ワンプレーごとに止めて細かい戦術を確認。試合の前日と2日前以外は公開練習だったが、全て非公開練習になった。

 ◆戦術 攻守において選手に自由を与え、個人の創造性に任せた戦術だったが、特に守備でポジショニングなど決まり事を作った。

 ◆先発 ほとんど固定だったが、連戦を考慮して数人入れ替えるターンオーバーを実施。

 ◆ミーティング 試合前日にまとめて行っていたが、毎日のように練習前に映像を使って確認。自分たちのプレー映像や海外クラブの映像を使用して、戦術の浸透を図っている。